私の居場所 147

 実はこの防犯ブザー、ふつーの防犯ブザーではありません。鳴らすと隊長と日向隊員が所有するスマホに連絡がいく仕組みになってます。と同時にGPS機能もONになる仕組みになってました。


 小屋の陰から3人が出てきました。真土灯里は完全ではないですが、持ち直しているようです。

 もし真土灯里が今日学校の授業に出られないとなると、今夜のテレビ出演はどうなるのでしょう?学業を休んでテレビに出たら大問題になります。どうやらそれはなくなったようです。ま、日向隊員も明石悠もそこまでは考えてませんでしたが。


 さて、校舎の廊下を歩く日向隊員ですが、ちょっとしたイベントが待ってるようです。

 日向隊員が教室の引き戸を開けました。とたんに声があがります。

「あ、来たぞ!」

 日向隊員はびっくり。クラス中のみんなが日向隊員を注視したのです。

「ええ~・・・」

 ちょっと前までクラス中のみんなが私をガン無視してたのに?・・・

 さっそく女生徒の1人が声をかけてきました。ちなみに、この女生徒、登校初日日向隊員と仲良くなったものの、次の日から徹底的に無視し続けた3人組の女子生徒の1人、女生徒Aです。

「日向さん、今日テレビに出るんでしょ?」

 彼女の隣りにいた女生徒Bは、持っていたアコースティックギターを日向隊員に見せ、

「ねぇ、今日テレビで歌う歌、今ここで歌ってくんない?」

 さらにその隣りにいた女生徒C。

「いいでしょ!?」

 けど、日向隊員は心の中で思いっきり嫌な顔をしました。

「ええ~・・・」

 実は日向隊員は3日前、バケツで水をぶっかけられるという夢を見てました。

 もう少し細かく書くと、この教室の中でみんなにおだてられ、アコースティックギターを弾きながら歌ってたら、いきなり水をぶっかけられ、みんなの笑いものになってたのです。

 日向隊員が見た夢は、これまですべて現実になってます。いわゆる正夢。でも、このことに関しては実体化しませんでした。それが今になって実体化? 3日経って実体化するの?

 しかし、登校時真土灯里が怖気づき、それを説得したせいで、日向隊員の教室の入室時間がぎりぎりになってました。日向隊員の背後で引き戸が開き、先生が入ってきました。

「よーし、みんな、朝のホームルーム始めるぞ!」

 女生徒Aは残念そう。

「あ~あ、先生来ちゃったよ・・・」

 女生徒B。

「じゃ、お昼休みお願いね!」

 日向隊員はふーっとため息。一安心ですが、昼休みにまた歌うように迫って来るのは確実。さあて、どう誤魔化そうか?

 授業中日向隊員はいろんなところに目配せしました。どこかに水が入ったバケツがあるはず・・・ けど、日向隊員の眼はバケツを発見できません。

 日向隊員は背後にある細長いロッカーを捉えました。掃除道具が入ったロッカーです。あの中にバケツがある?・・・

 そうだ! テレビ局の人から、今日テレビで歌う歌は、それより前に他所ほかでは絶対歌わないでくれ! と言われてたんだ! だからここじゃ歌えないんだ! こううそを言っとけばいいじゃん!

 けど、昼休み、そんな言い訳が通じるはずがありませんでした。

 女生徒Bが日向隊員にギターを突き出しました。

「じゃ、お願いね!」

 日向隊員はそのギターを受け取りません。

「あは、テレビ局の人から今日テレビで歌う歌は、その前に絶対他所ほかでは歌わないでって言われてるんだ!」

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