私の居場所 133

 倉見隊員はスロットルレバーに手をかけ、

「当機をこのまま空中に静止させます!」

 この2人の後ろにある補助席に座ってる隊長が、手にしてたマイクに話しかけます。

「寒川、着いたぞ! 用意できてるか!?」

 するとスピーカーの向こうから、

「今変身完了しました。これから機外に出る部屋に向かいます!」

「了解!」


 寒川隊員はスマホをしまうと、隣りを見て、

「行くぞ!」

 隣りにいたメガヒューマノイドに変身済みの日向隊員が応えます。

「はい!」

 2人は長い廊下を歩き始めました。寒川隊員は日向隊員に、

「今日演奏したみたいだな、真夜中のノックの人たちと」

 日向隊員は照れ笑いとも苦笑いともとれる笑みを浮かべ、

「ええ・・・」

「動画投稿サイトで見たよ」

「へ~」

 日向隊員はさらに、

「最後まで見てくれましたか?」

 と訊こうとしましたが、やめておきました。今日演奏した曲は、寒川さんが忌み嫌ってるクイーンの曲。頭からしっぽまで聴けるはずがありません。たぶん断片的に見ただけのはず。

 明日は寒川隊員がリスペクトしてる尾崎豊の曲を演奏します。それを聴いたらきっと寒川さんは喜んでくれるはず。日向隊員は心の中でニコッと笑いました。

 長い廊下の終点となる片引きの自動ドアが見えてきました。寒川隊員がつぶやきます。

「ふ、やっと終点が見えてきたよ。ドレッシングユニットと機外に出る部屋までの距離があり過ぎるんじゃないか!?」

 最初からドレッシングユニットを組み込むという前提でストーク号を設計、製作しておけば当のドレッシングユニットは外周部に配置できたのですが、何分あとから追加されたもの。そのためドレッシングユニットは、中心部に配置されてしまったようです。


 小さくて殺風景な部屋。自動ドアが開き、寒川隊員と日向隊員が入ってきました。寒川隊員は専用のスタンドに立て掛けられていた大型の光線銃を持ち、

「ん、意外と軽いなあ?・・・」

 日向隊員も寒川隊員が抱えた銃を見て、

「それが今回開発された銃ですか?」

 寒川隊員はその銃を日向隊員に渡し、

「ああ」

 日向隊員はそれを受け取ると、その銃をなめるように見て、

「あは、すごいや!・・・」

「そいつをマックスで撃てば、木端微塵に吹き飛ばすことができるて話をしてたな、重爆撃機を1発で!」

「ええ~!?・・・」

「とりあえず今日は、出力を1/10にしとこう!」

「はい!」

 日向隊員は銃器の銃床についてるスライドに触れました。

 壁についてる液晶モニターがついてる計器。寒川隊員はその中の一番大きなボタンに触れ、

「じゃ、この部屋の気圧を機外そとと同じにするぞ」

「はい!」

 と言うと、日向隊員は電子の兜のシールドをピシャッと閉めました。

 日向隊員の身体はあちらこちら機械化されてますが、両耳はオリジナルのまま。今この部屋の気圧を機外と同じにするということは、急に減圧するということ。そんなことしたら耳がやられてしまう可能性があるのです。

 それでシールドを閉め、電子の甲冑内の気圧を一定に保つことにしたのです。

 寒川隊員の指がボタンを押しました。と、寒川隊員は両耳を押さえました。

「うわっ、耳が!・・・」

 やはり上空で減圧するということは、生身の人間にはかなりきついことのようです。

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