私の居場所 130

 千石さんはその場を離れました。日向隊員はその背中を見て、苦笑い。

「弾きたかったなあ、ギター・・・」

 明石悠と代官さんが打ち合わせしてます。代官さんはベースを弾きながら、

「この音が終わるタイミングで歌い出して! ちょっとやってみようか!?」

「はい!」

 代官さんはベースを爪弾きます。たった今奏でた音と同じ短いメロディ。そして、

「はい!」

 の掛け声。明石悠はこのタイミングで歌い始めます。

「ア~イ ワズ ボ~ン・・・」

「そうそう、そのタイミングで!」

 高浜さんは三脚にムービーカメラを取り付けてます。その作業が終わりました。

「よーし、みんな、そろそろ行くかあ!?」

 一同が応えます。

「はい!」「OK!」

 高浜さんは別のムービーカメラを持ち、それを千石さんに向けました。

「じゃあ、頼むぞ。千石!」

「OK!」

 千石さんのベースが再び同じメロディを奏でました。明石悠がスローに歌い始めます。そのヴォーカルが一旦終わると・・・

 ドゥドゥドゥドゥ 真土灯里のギターが始まりました。新生真夜中のノック、最初の曲の演奏開始です!

 6人の演奏を聴いて高浜さんは感激しました。

「すごい、6人で初めて演奏してるていうのに、ちゃんと調和アンサンブルが取れてる!」

 曲はバックコーラスが入るパートに。それを聴いて高浜さんは再び驚きました。

「おいおい、バックコーラスのハモリも、リハもしてないのにもう完成してるのかよ!? もう6人でデビューしても、な~んの問題もないんじゃないか!?」

 一方日向隊員はピアノを弾きながら、いろいろと考えてました。

「あは、なんか不思議・・・ 私、プロのみんなと一緒に演奏してる・・・ 寒川さんからギター習って、まだ一月も経ってないのに・・・

 けどなあ、私が寒川さんから習ったのはギターなんだけど・・・ ここはギターを弾かせて欲しかったなあ・・・」

 日向隊員は横目で千石さんを見てました。千石さんはストラップでギター吊り下げてるのにもかかわらず、ずーっとキーボードを片手で弾いてます。日向隊員はぽつり。

「なんだよ、それじゃギター持ってる意味ないじゃん・・・」

 実はこの曲、サイドギターの出番はあまりないのです。けど、日向隊員は独自のアレンジでストリートライヴ初日はサイドギターを弾いてました。それゆえ日向隊員は、ここはギターを弾きたかったのですが・・・

 日向隊員は今度は熱唱してる明石悠を見ました。日向隊員は再び思いました。

「明石さんもあっという間に歌がうまくなったなあ。初めて聴いたときは、まあ歌がうまいかなて感じだったけど、いつの間にかプロのレベルに達してるよ! すごいよ、彼女!」

 日向隊員は黒部隊員を思い出し、

「けど、まだあの人のレベルには達してないかな?」


 曲はどんどん進行していきます。千石さん、代官さん、久領さんは演奏しながら真土灯里に注目してます。

 真土灯里は自分たちを高圧的に扱った真土勝之の一人娘。もちろん3人とも、真土勝之に恨みなど一片も残ってません。その一方で、プロのミュージシャンとしては、どうしても彼女のギターテクニックが気になってたのです。

 3人ともかつて真土灯里がテレビで披露したギターを見てました。小学生とは思えないギターテクニックでした。けど、まだまだ足りないところがあるな、とそのとき3人は感じてました。

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