私の居場所 127

 高浜さんは明石悠を見て、

「君はいろいろとあったみたいだね?」

「はい」

「たくさんの人の前で歌える?」

「大丈夫ですよ!」

親御おやごさんは?」

「あは、うちの父だったら、きっと参加しろと背中を押すと思います!」

「あは、そっか!」

 高浜さんは今度は日向隊員を見て、

「君は!?」

 日向隊員は強く思いました。ここはちゃんと言わないと! そして口を開きました。

「いいですけど、1つ条件があります!

 私と明石さんはずーっと尾崎豊の曲をってました! 尾崎豊の曲をらせてください!」

 それを聞いて真土灯里は「え!?」という顔を見せました。が、高浜さんは涼しい顔で、

「ああ、いいよ!」

 と返答。それを聞いて今度は日向隊員がびっくり。

「ええ~?・・・」

 高浜さんは応えます。

「昨日ライヴ配信のあと灯里ちゃんに教えたことを君たちにも教えてあげようか? 真夜中のノックに何があったのかを。ちょっと長くなるが・・・

 今から1週間前、レコード会社のお偉方がわざわざオレを訪ねてきたんだ。オレの生まれ故郷で3人組のバンドがものすごい評判を集めてる。ぜひスカウトしたいと。それにはどうしてもオレが必要なんだと。実はそいつら、千石たち3人だったんだよ」

 日向隊員。

「ああ、昨日ライヴ配信に出てきた千石さんと代官さんと久領さんのことですね」

「ああ。実は以前、その3人にから電話がかかってきたことがあっんだ。やつら、また真夜中のノックに入れてくれくれないかとお願いしてきたんだよ。灯里ちゃんのお父さん、真土勝之が亡くなってジャスト1ケ月後のことだった。

 オレは心底ブチ切れたっけな。ふざけんな! 勝手に出て行きやがって、今更なんだ!? 葬式にも来なかったクセに! と。そしたら、やつら、連絡してこなくなったよ。

 そんなやつらにオレから逢いに行って欲しいと言うんだよ、レコード会社のお偉方は。

 でもなあ、オレはもう大人になってた。それにレコード会社のお偉方の希望だ。とりあえず3人に逢いに故郷いなかに行くことにしたんだ。

 変装してやつらのライヴを見に行ったら、ライヴハウスは超満員。ものすごい熱気だった。こりゃあレコード会社も欲しがるわけだ、と納得したっけな。

 けど、やつらの音楽には違和感があった。オレと真土がやってた音楽とは明らかに違う音楽だったからだ。

 ライヴが終わるとオレと千石たち3人とレコード会社の人で話し合いとなった。

 3人はやはり真夜中のノックの復帰を訴えた。オレはライヴを見て感じた違和感をやつらにぶつけてみた。オレと真土がやってた音楽とは、全然違う音楽をやってるんじゃねーか!? てね。

 するとやつらはこう応えた。これがオレたち3人が本来やりたかった音楽だ。真夜中のノックにいたときは真土に押さえつけられてできなかったが、ほんとうはこんな音楽をやりたかったんだ、てね。

 オレはそれを聞いてプツンと切れたな。じゃ、お前たちで勝手にやりゃあいいじゃないか! と怒声を浴びせてやったんだ。そうしたらやつら、それでも真夜中のノックとしてやりたいんだ! と訴えてきたな。

 話が決別しそうになったとき、レコード会社の人の発案で翌日また話し合うことになったんだ」

 ここで日向隊員が質問。

「真土さんのお父さんてそんなに高圧的な人だったんですか?」

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