私の居場所 125

 隊長が運転するセダンの中、真土灯里の発言が続いてます。

「今日高浜さんと逢う予定があるから、そのときでいい?」

 それに反応する日向隊員。

「うん、いいけど、どこで逢うの?」

「高浜さんがいつも使ってるスタジオ」

「ええ~? レコーディングスタジオ!?」

「そうだよ」

「へ~!」

 レコーディングスタジオに入るの、初めて! どんなところなんだろ、レコーディングスタジオって? 日向隊員はドキドキ、ワクワクし始めました。


 隊長が運転するセダンが住宅街の道路を走ります。同乗者3人が通う中学校の通学路です。と、掃除中のおじいさんの横を通り過ぎました。ハンドルを握る隊長は、横目でそのおじいさんを見て、

「あのじーさんだっけ? 昨日日向をガン無視した意地悪なじーさんは!?」

 日向隊員もそのおじいさんに気付いてました。で、つぶやきました。

「またあの人を振り向かせたいな・・・」


 セダンが中学校の正門の前の道路に停車。明石悠と真土灯里と日向隊員がセダンを降ります。真土灯里と明石悠はセダンの運転席をのぞき込んで、

「ありがとうございます!」

 運転席の隊長が応えます。

「学校が終わったら、必ず連絡してくれよ! 迎えに来るから!」

 セダンが走り出しました。日向隊員は2人に、

「じゃ、行こっか!」

 明石悠は、

「うん!」

 真土灯里もうなづきました。

 と、2人の女子中学生が駆け寄ってきました。3人、特に日向隊員は危険を感じ、身構えました。けど・・・ 2人のうち1人が、

「がんばってください!」

 何か意地悪してくるんじゃないかと思ってた日向隊員は、ちょっと腰砕け。

「へ?・・・」

 もう1人の女子中学生が、

「応援してるよ!」

 2人は駆けるように校門の中へ消えました。日向隊員は呆気に取られてます。真土灯里は、

「この学校にも私たちにもファンができたみたいね!」

 日向隊員はそれを聞いて、明るい顔になりました。

「うん!」

 でも、そんなには甘くありませんでした。この日も3人は、中学校の中では徹底的に無視されました。けど、3人は小さな幸せを感じてました。


 下校時間となりました。3人が門をくぐるとクルマが待ってました。運転席には隊長の姿が。今度の隊長のクルマは黄色のセダンです。

 来たときと同じ、明石悠は助手席に、日向隊員と真土灯里は後部座席に乗り込みました。

 日向隊員は後部座席に座ると、その座席に立てかけてあったギターのソフトケースを抱くように持ちました。日向隊員はご満悦の表情。

「あは」

 真土灯里はそれを見てびっくり。

「え、真土灯里モデルそれ持ってきたの?」

「うん! ほら、レコーディングスタジオに行くんでしょ、これから? レコーディングスタジオて私初めてだから、思いっきりギター弾かせてもらおうと思って、たいちょ・・・ あは、香川さんに頼んで持ってきてもらったんだ」

「へ~・・・ けど、これからはギターはやめてピアノに専念すると言ってなかった?」

「それはライヴ。私はギタリストになる夢は捨ててないよ。いつかはステージで思いっきりギターを弾くんだ!」

「あは、そうなんだ!?」

 彼女、真夜中のノックに参加する気があるな? 真土灯里はそう感じました。そして安心しました。

 真土灯里はネット民と呼ばれてるゴロツキに常に狙われてる身。それゆえ日向隊員に守ってもらうつもりでいました。

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