私の居場所 124

 ハンドルを握ってる隊長の発言が続いてます。

「昨日のライヴ配信で君が真夜中のノックに参加すると言ったせいか、裏サイトでは・・・ いや、表のブラウザでも不穏な書き込みだらけになってるんだよ。だからオレが直接迎えに来たんだ」

 さらに隊長は、

「現に今朝早く、君の家に火焔瓶を投げつけようとした男がいて、寸前で取り押さえたんだよ!」

 と言おうとしましたが、やめておきました。実はあの2人の警官は、正規の警官ではなかったのです。公安7課が用意したある意味、ニセの警官でした。そのためこの話は表に出したくなかったのです。で、代わりに、こんな発言をしました。

「ぎりぎりまでうちの中で待ってて欲しかったな」

「あは、すみません」

 真土灯里は心底謝ってる様子がありません。隊長はしょうがねぇなあという顔を見せ、日向隊員に、

「おい、日向、例のもの渡してやれ!」

「あ、はい!」

 日向隊員はあるものを取り出し、その手を真土灯里に差し出しました。

「はい、これ!」

 真土灯里はそれを受け取り、凝視しました。

「え? 何、これ?」

 それはてのひらにすっぽりと収まるほどの装置。児童が所持する防犯ブザーそのものでした。真土灯里はええ~ 今更こんなもの持つの? という顔を見せ、

「あは、いらないですよ、こんなの~」

「いや、そうは言わずに、ずーっと持ってて欲しいんだな、それを。その防犯ブザーからは電波が発信されてるんだ。それを持っていれば、君がどこにいるのか逐一わかるはずだ」

 真土灯里はついに不機嫌な顔を見せてました。

「ええ~?」

「もちろん、君のプライバシーのことも考え、電波を停止するスイッチもついてる。でもなあ、君は本当に誰かに狙われてるんだ。だからそのスイッチは常時オンにしておいて欲しいんだ」

 真土灯里は思いました。私は日向さんに守ってもらうつもりでいるけど、それには限界があると思う・・・

 私は今までクラスメイトやネット民と呼ばれてるゴロツキから何度も何度も痛い目にあわされてきた。真夜中のノックに参加すると宣言したから、またやつら、嫌がらせしてくるかも? それを考えたら、持ってた方がいいかも?

 さらに明石悠は隊長を見て、心の中でこうつぶやきました。こんな発信機をすぐに用意するなんて・・・ この人、みんなが噂してる通り、本当にテレストリアルガードの人なのかも?

 真土灯里はとりあえずその装置をポケットに入れ、

「わかりました」

 と返事をしました。ここからが本題。真土灯里は再び質問しました。

「ねぇ、日向さん、明石さん、昨日のライヴ配信、見てくれた?」

 明石悠が応えます。

「見たよ!」

 日向隊員は、

「あは、ちょうどその時間私用事があって・・・ あとでアーカイブを見たよ」

「どう、2人とも真夜中のノックに参加してみない!」

 すると明石悠は、

「うん、いいかもしれない」

 と消極的ですが、了解を得ました。けど、日向隊員は、

「ちょっとその件で高浜さんと話がしたいな」

 と、YesともNoとも言えない回答。真土灯里はちょっとびっくり。そしてがっかり。

「え?・・・」

 日向さんが参加してくれないんじゃ、私も真夜中のノックに参加できない・・・

 けど、真土灯里はすぐに気持ちを切り替え、

「うん、わかった!」

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