私の居場所 100

 その人影は日向隊員でした。

「うっ・・・」

 女性教師は言葉に詰まりました。彼女も日向隊員にわだかまりがあるのでしょうか? 

 もちろんそれもありますが、それ以上に背中に背負ったアコースティックギターのハードカバーケースが気になったのです。

「こんなもの、中学校に持ってきていいの? け、けど、この、日向愛でしょ? うわ~ めんどくさ~・・・」

 結局声かけしていた教師全員は、全員日向隊員を見て見ぬふり。日向隊員はギターケースを背負ったまま、正々堂々中学校の中に入っていきました。


「おはよう!」

 日向隊員が教室に入ってきました。今日もみんな、日向隊員をガン無視です。日向隊員はそれを見て、ある思いが浮かんできました。

「ああ、やっぱりガン無視かよ。けど・・・」

 日向隊員は背負ったギターを降ろし、それを凝視して、

「そのうちみんな、私をちやほやしてこのギターを弾かせるはず! そして後ろからバケツで思いっきり水をぶっかける! その映像を公表すれば・・・」

 けど、何か起きる気配がありません。たんたんと過ぎる時間。日向隊員は拍子抜け。

「ええ~?・・・」

 結局何もないまま授業が始まりました。

 授業中日向隊員は思いました。

「きっと次の休み時間に・・・」

 けど、次の休み時間にも何も起きません。日向隊員はただひたすらガン無視され続けてます。

 そんな中、日向隊員はふと思いました。

「今日明石さんと真土さん、学校に来てるのかなあ? 明石さんのあのお父さん、あんな人だから、来てる可能性高いなあ・・・」

 日向隊員の想像通り、明石悠は今日登校してました。明石悠もみんなからガン無視されてました。

 けど、彼女はもともとみんなから無視されてました。それに彼女には日向隊員と真土灯里がいます。それが支えとなってるので、かなり心に余裕がありました。


 真土灯里ですが、彼女もみんなからガン無視されてました。

 彼女はほんの少し前までは八幡このみという名前を使ってましたが、八幡このみ時代はあまり目立たないようにしてました。

 父親のありもしない盗作問題で徹底的にイジメられたので、名前変更を機に極力目立たないようにしてたのです。そんなわけで、ガン無視されてもあまり気にしてないようです。

 それに今彼女にも今日向隊員と明石悠がいます。それが彼女の支えとなってました。


 次の休み時間も何も起きませんでした。日向隊員はアレ?という感じになってしまいました。私はいつになったら水をぶっかけられるの?

 この日この中学校は久しぶりの授業再開。というわけで、授業は午前中のみ。みんな帰り支度を始めてます。そんな中、日向隊員は自分の机に座ったまま、唖然としてます。

「ねぇ、誰か私にギターを弾くように言ってよ!」

 けど、日向隊員に声をかけるも者はいません。。日向隊員は仕方なく立ち上がりました。


 中学校の校門。たくさんの生徒が出てきました。と、その中にぽっかりと人が空いた部分がありました。その中心には日向隊員がいます。みんな日向隊員を避けてるのです。

 校門の外には数人の警官が立ってました。朝たくさん群がってたマスコミを見て生徒の保護者と学校が問題視したようです。で、警察に通報。警察は学校の外に警官を配置し、マスコミを追っ払ったようです。

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