私の居場所 70
ギターの音です。寒川隊員はすぐにピーンときました。
「日向か?」
寒川隊員はすぐ目の前にある一本引きの自動ドアをノックしました。
「日向、いいか!?」
ここは日向隊員の私室。日向隊員は応えます。
「あ、いいですよ!」
日向隊員はリモコンを持ち、それを自動ドアに向けました。すると自動ドアがすーっ開き、寒川隊員が入ってきました。
「いやっ!
早速だが悪いニュースだ。放火されたぞ、お前の家」
日向隊員はびっくり。
「ええ~!?・・・」
ちなみに、日向隊員はベッドに腰かけ、ギターを弾いてました。寒川隊員の発言が続きます。
「ま、
しかし、どうなってんだ、いったい? そいつ、お前の家に火をつけた上に、それをインターネットで配信しようとしてたんだぞ。いや、もしかしたらライヴ中継だったのかもしれないな?
放火してもなんとも思わない。おもしろきゃ何をしても構わない、か・・・ インターネットてーところは恐ろしいところだな・・・
ところで、なぁ、日向、お前、お医者さんに寝てろっと言われてたんじゃないのか?」
「あは、どうしても弾きたくなっちゃって、ギターを・・・」
と、寒川隊員は日向隊員の弦を弾く右手に何かを発見しました。
「ん? なんだ、それ? ピック・・・ じゃないのか?・・・」
日向隊員は右手の指に持つ銀色の物体を寒川隊員に見せました。それは100円硬貨でした。
「あは、お金ですよ」
「え、100円?」
「今日校門の前でギターを弾いてたら、ものすごくギターがうまい女の人が来て、いろいろとギターテクニックを見せてくれたんですよ!
彼女、コインをピックにしてギターを弾いてたんですよ。それがとってもかっこよくって、私、一発でその人のファンになっちゃたんです!」
それを聞いた途端、寒川隊員の脳裏に嫌な予感が横切りました。
日向隊員はひざの上に抱えたギターを見て、
「ギターの弦もガット弦よりスティール弦の方がうーんといいと言われたから、前使ってたギターを引っ張り出してきて、弾いてたところなんですよ」
と、日向隊員はここであることに気づきました。で、平謝り。
「あ、すみません・・・」
「ん、どうした?」
「せっかく私のためにガット弦ギターを用意してもらったのに、勝手に前のギターを引っ張り出してきちゃって・・・」
「いや、構わないさ。オレもスティール弦の方がずーっといいと思ってたんだ」
「あは、そう言ってもらえると嬉しいです。
彼女、いろいろと知ってるみたいでした、ギターのことを! 彼女について行ってギターを教えてもらおうと思ったんですけど、ほら、私今、頭ケガしちゃってるから・・・ 2日後にまた会おうって約束して今日は別れてきたんです。
あは、早くギター教わりたいなあ、彼女から・・・」
「そっか・・・」
「すみません。せっかく寒川さんからギターを教わったのに・・・」
「別に謝ることないさ。オレの知ってるギターテクニックなんて、プロからみたらほんのわずかだ。もっとうまい人はたくさんいるよ。そんな人から教えてもらうがいいさ。
邪魔したな」
と言うと、寒川隊員は自動ドアを開け、出て行きました。
廊下に出て歩く寒川隊員。その顔は苦虫を噛み潰したような表情です。思い出したくもない記憶が蘇ってきたからです。
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