私の居場所 69

 寒川隊員は歩き始めました。

「追っ払ってきますよ、また!」

 寒川隊員は引き分けの自動ドアを開け、出て行きました。


 住宅の敷地に忍び込んだ若者は道路と反対側の庭に出ました。ここには3mほどの庇があり、その下にはイスとテーブルがあります。

 若者はイスとテーブルを確認すると、胸のカメラに触れました。どうやらカメラを止めたようです。次にチラシを取り出しました。


 サブオペレーションルームのモニターが一瞬眩く光りました。隊長はそれを見て、

「ん?」

 なんと若者がチラシに100円ライターで火をつけたのです。隊長は慌てます。

「あのバカ、火をつけやがった!?」

 隊長はマイクを握り、

「寒川、急げ! あいつ、火をつけたぞ、家に!」


 長く長く続く地下通路を歩く寒川隊員。その耳にはイヤホンが刺さっており、今そのイヤホンから隊長の声が響いてきました。びっくりする寒川隊員。

「ええ!?」

 寒川隊員は駆け足になりました。

「急がないと!」


 サブオペレーションルーム。橋本隊員は倉見隊員を見て、

「オレたちも行こう!」

「はい!」


 暗闇の中、燃えるテーブルとイス。側にある建物の外壁にも火が移り始めました。若者はそれに身体を向けてます。胸に装着したカメラで撮影してるのです。

 と、いきなり玄関が開き、寒川隊員が飛び出してきました。

「こらーっ!」

 はっとする若者。そのままダーッと駆け出しました。寒川隊員は外向きの蛇口を捻り、バケツに水を入れます。

「くそーっ! まじかよ、火をつけるなんて!?」

 寒川隊員は燃えてるイスとテーブルと外壁に水をぶっかけます。

 そこに橋本隊員と倉見隊員が駆け付けました。橋本隊員は持ってきた消火器を火に向かって噴霧。

「くそーっ、なんてやつだ!?」

 倉見隊員も消火器を噴霧。

「あいつ、火事をライヴ中継するつもりだったんですよ!」

 橋本隊員。

「マジかよ、おい!? 自分で火をつけておいて、その火事をライヴ中継って・・・ 江戸時代だったら火をつけ時点で火あぶりの刑だっちゅーの!」

 火はあっという間に鎮火しました。3人はため息。

「ふーっ・・・」


 サブオペレーションルーム。隊長はマイクに、

「お疲れさん! 本来なら警察か消防に通報しないといけないってところだが、いろいろと秘密があってな、その家には。とりあえず公安7課には報告しておくよ。お前らは引き上げてこい!」

 住宅の敷地内の橋本隊員。

「了解!」

 橋本隊員は寒川隊員と倉見隊員を見て、

「じゃ、引き上げよっか」

「了解!」

 3人は玄関へと歩き始めました。橋本隊員は寒川隊員を見て、

「まだこの家に侵入してくるバカがいるかもしれないな。あとはオレが見張っておくよ」

「あは、そうですか? じゃ、お願いします!」


 なお、明石悠の家にもこの夜、複数の侵入者がいました。中には落書きする者も。

 明石悠の父親はテレストリアルガードの隊員。そのせいか、家の警備は厳重。しかも遠慮がありません。侵入してきた人物はすべた住居侵入罪で逮捕となりました。


 基地に戻った寒川隊員は、まずサブオペレーションルームに入って隊長に報告。そして廊下に出て、別の部屋へ。

 寒川隊員はそこで普段着に着替え、今度は自分の部屋へと向かいました。と、寒川隊員の耳が何かを捉えました。

「ん?」

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