私の居場所 45

 啓一は再び日向隊員をにらんで、つぶやきました。

「あの女を殺すには、どうすればいいんだ?・・・」

 啓一の眼は明石悠に止まりました。

「そうだ、あの女を利用すれば?・・・」


 車中の隊長ははっとしました。歩道橋の上の3人組に気づいたのです。ま、こんなところにモヒカンとリーゼントがあったら、当然不審に思いますよね。

 隊長はスマホを手にし、

「女神隊員、歩道橋の上を見てくれ!」

 女神隊員のヘルメットにはヘッドセットが仕込んであり、それが隊長の音声を捉えました。ちなみに、これは電話ではなく、専用ソフトです。

 女神隊員は歩道橋の上を見上げました。そして3人組の姿を確認しました。

 車中の隊長は再びスマホに、

「怪しさ全開なやつらだな。ちょっとさぐりを入れてくれないか?」

「了解!」

 女神隊員はバイクのエンジンをかけると、片足をアスファルトに置き、それを軸にスピンターン。そのまま歩道を走り出します。隊長はびっくり。

「ええ?・・・」

 歩道橋の上の3人も、女神隊員のバイクに気づきました。

「ん、なんだ、あいつ?」

 ギターを弾いてる日向隊員も、女神隊員のバイクが気になりました。

「女神さん、何をする気?・・・」

 なお、歌に夢中なせいか、明石悠は気づいてません。オーディエンスも背後で起きてるせいか、または明石悠の歌に夢中になってるせいか、気づいてないようです。

 が、橋本隊員・倉見隊員・寒川隊員は気づきました。3人とも驚きの表情。

「ええ~・・・」

 女神隊員のバイクは歩道橋の階段部分にさしかかり、中央の自転車用スロープを上りはじめました。そのままゆったりとした螺旋状の階段を駆け上って行きます。それを見て隊長は唖然。

「あいつ、何をやる気だよ?・・・

 しかし・・・ あれ、ふつーのバイクだろ? あんなところに上って行けるのか、あれで?・・・」

 歩道橋の上のリーゼントの男は焦った顔を見せました。

「あ、あいつ、何をする気だ!?・・・」

 啓一とモヒカンの男も焦ってます。

「おいおい・・・」

 女神隊員のバイクは階段を上り終え、3人と向き合いました。緊張する3人。

「う?・・・」

 女神隊員のバイクはちょっと間を空けて急発進。グォーン! そのまま豪快にウィリー。3人は思わず後ずさり。

「オ、オレたちを殺す気かよ!?」

 車中の隊長は頭を抱え込んでしまいました。

「あちゃーっ! あいつ、地球の常識ていうやつをまだ理解してないのかよ?・・・」

 歩道橋の上、3人はそのまま後ろに駆け出しました。

「逃げろーっ!」

 3人は転げ落ちるように階段を下ります。

 キィーッ! 女神隊員のバイクは階段が始まる寸前で急停車。跨ってる女神隊員は階段を下りてる3人を見下ろします。

 3人は今ちょうど地面に着いたところ。うち啓一が振り向き、

「覚えてろよーっ!」

 3人はうのていで逃げて行きます。ヘルメットのシールドのせいで見えないのですが、女神隊員はどうやら微笑んでるようです。そのヘルメットに内蔵されたヘッドセットが電波を受信しました。

「おい、女神隊員、やり過ぎだぞ!」

 それは隊長の声。ちょっと語気を荒げてます。隊長の言葉は続きます。

「エンジンを切って下りてこい!」

「了解!」

 女神隊員はバイクを下り、バイクを押し始めました。そのまま階段の中央にあるスロープを下りて行きます。ギターを弾いてた日向隊員は、それを見て呆れます。

「あははは・・・」

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