私の居場所 44

 2人の警官は娘Aと娘Bに向かって歩き始めました。娘Aと娘Bはそれに気づき、びびります。

「う!?」

 娘Aは娘Bを見て、

「行こ!」

「うん!」

 2人は慌てるようにその場を立ち去りました。それを見て2人の警官はニヤッと笑いました。その顔を見ると、なんと橋本隊員と倉見隊員でした。

 橋本隊員と倉見隊員は、日向隊員から見て左手側にいました。実は右手側にはもう1人、警官に化けたテレストリアルガードの隊員がいました。寒川隊員です。寒川隊員は明石悠の歌声を聴いてます。その顔は笑顔。

「ふふ、日向あいつ、まさかあの(明石悠)にこの曲を歌わすなんてな・・・」

 実は今明石悠が歌ってる曲は、尾崎豊の僕が僕であるために なのです。これは寒川隊員の人生を変えた曲。日向隊員にギターを教えるとき、真っ先に教えた曲でもあります。

「日向が教えたんだな、この曲を。ふふ・・・」

 寒川隊員の笑みは止まりません。

 一方日向隊員はギターを弾きながら熱唱してる明石悠を凝視してます。

「ふふ、一生懸命に歌ってる、歌ってる。こんなところで歌わしたら萎縮するかと思ったけど、そんなことはなかったみたい」

 いや、明石悠はほんとうはこんなところでは歌いたくありませんでした。けど、明石悠にとって日向隊員は唯一の頼り。だから日向隊員の提案には絶対逆らえないのです。

 それにしても明石悠の熱唱は半端ありませんでした。嫌なことばかりだった中学校の校門の前で歌う。それにはこれくらいの集中力が必要なんですね。

「けどなあ・・・」

 日向隊員は通りの向こうをふと見ました。

 今日向隊員たちが歌ってる場所は歩道です。その前には片側1車線、計2車線の車道があり、さらにその向こうには同じ幅の歩道があります。

 現在この歩道には1台の250ccクラスのバイクが駐まってます。そのバイクの側に1人の高身長の女性が立ってます。彼女はそのバイクのライダーのようで、フルフェイスのヘルメットにライダースーツをまとってます。実はこの女性は女神隊員なのです。

 女神隊員の背後には大きなコインパーキングがあり、何台かクルマが駐まってます。その中に運転席に人が乗ったままのクルマがあります。その人は私服の隊長でした。隊長も日向隊員と明石悠を見守ってたのです。

 なお、クルマは隊長の私物。テレストリアルガードのカラーリングは施されてません。

 日向隊員はギターを弾きながら苦笑いしました。

「もう、テレストリアルガード総出で私たちを警護するなんて・・・ もし、こんなときに宇宙人が襲ってきたらどうするんだろ?」

 一方、女神隊員は明石悠を見てます。ふとつぶやきました。

「黒い肌の女の・・・ ふふ、まさかね・・・」


 さて、先ほど娘Aと娘Bが曲がった交差点にはX字型の歩道橋があります。今この上にフードを目深に被った男がいます。よーく見るとその顔はあざだらけ。そう、この男は啓一なのです。

 啓一は遠目で日向隊員と明石悠をにらんでます。何か考えてるようです。そこに、

「あ、あなた、もしかして、ぼっちゃん・・・」

 の声が。啓一がはっとして横目で見ると、モヒカンの男とリーゼントの男が立ってました。

「なんだ、お前たちか・・・」

 モヒカンの男は質問します。

「ど、どこに行ってたんですか、今まで?・・・」

 リーゼントの男も、

「心配してたんですよ」

 啓一はぶっきらぼうに応えました。

「ふ、どうでもいいだろ!」

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