私の居場所 8
寒川隊員はピッチパイプを日向隊員に差し出します。
「はい、ピッチパイプ」
「あは、自分でできますよ」
寒川隊員はちょっとびっくり。
「え?」
日向隊員は右手の指で弦を弾きながら、左手でペグを廻しました。寒川隊員はそれを見て思いました。
「ああ、こいつ、絶対音感持ってるんだった・・・」
寒川隊員はただ苦笑いするばかり。日向隊員はギターを構えました。
「じゃ、弾きます」
日向隊員がギターを弾き始めました。どうやら
右手の指先ですが、当然治癒・・・ いや、修理済み。なおかつ、ギターを弾くことを考え、左右の指とも皮膚は厚くなってました。
みんなうっとりと聴いてます。が、しばらくして隊長は、あれ?という顔になり、寒川隊員に小声で質問しました。
「お、おい、これ、なんて曲だ」
「さあ・・・」
どうやら寒川隊員も知らない曲のようです。けど、橋本隊員は知ってたようです。隊長に話しかけました。
「ショパンのノクターンですよ」
「へ~ クラシックか・・・」
隊長は感心しきり。ちなみに、日向隊員は軽やかにギターを弾いてるように見えますが、ところどころあれ?て感じになるところがありました。ミスタッチ。ま、つい最近覚えたギター。これは許容しないといけませんね。
日向隊員は最後の1音を弾き終えました。すると女神隊員が拍手。それに続けて隊長、宮山隊員、橋本隊員、倉見隊員が拍手。最後に寒川隊員が拍手しました。日向隊員はちょっと顔を赤らめました。
「あは」
寒川隊員。
「クラシックか。よく弾けたな」
「練習してたんです。私、ずーっとピアノを習ってたんですけど、ノクターンは課題曲の1つだったんです。だからこの曲を選びました。
ピアノとギターと
隊長。
「いつから練習を?」
「寒川さんにギターを教えてもらった日から」
寒川隊員は日向隊員にギターを教えた最初の日を思い出しました。
「え、あの日から?」
「はい」
こいつはかなわないな。寒川隊員は苦笑いするしかありませんでした。
日向隊員は自分の両手の指を見て、
「なんか手術する前よりうまく弾けるようになってる気がする・・・ 脊髄反射をう~んと速くしてもらったせいかな?」
それを聞いて宮山隊員がまたもやびっくり。
「ええ、脊髄反射?・・・」
それを横目で見た隊長は、日向隊員の頭をポンと叩き、
「コラ、自分の秘密をそんなにしゃべるなって」
「あは、すみません」
夜になりました。テレストリアルガード基地は静寂に包まれてます。
ここは地下にある隊員1人1人に与えられた部屋の1つ。日向隊員の部屋です。日向隊員はパジャマに着替えベッドの上で寝てます。けど、眼はランランと輝いてます。日向隊員は寝返りを打って、つぶやきました。
「眠れない・・・」
日向隊員はベッドを降り、シューズを履いて歩き始めました。
日向隊員がパジャマに上着をひっかけた状態で、テレストリアルガード基地の外に出てきました。日向隊員がふと見上げると、3階建てビルの屋上にほのかな光が。
「ビルの屋上に誰かいる?」
日向隊員はビルへ小走りで向かいました。
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