侵略者を撃つな! 52

 真田希望のぞみは以前目撃した、金目ひなたたちが公園で山際怜子から5,000円巻き上げてるシーンを思い出しました。

「あれをスマホで撮っておけば・・・」

 真田希望のぞみはほぞを噛むしかありませんでした。


 下校時刻となりました。駆け付けたマスコミ数社が校門の外で子どもたちにマイクを向けてますが、期待する応えはまったく得られてないようです。真田希望のぞみは思い切ってインタビューを受け事実を公表したい気分ですが、何も証拠を提示できなければ意味がありません。ヘタすりゃ、弟たちに迷惑がかかってしまいます。

 真田希望のぞみははがゆい思いで校門を離れていきました。


 住宅街の帰路をとぼとぼと歩く真田希望のぞみ。と、何かが真田希望のぞみの前に立ちふさがりました。はっとして顔を上げると、そこには広川雫の姿が。真田希望の顔はあっという間に鬼の形相に変わりました。

「広川ーっ!」

 こいつ、何をぬけぬけと私の前に現れたんだよ? 真田希望のぞみは反射的に広川雫の襟首を両手で攫みました。そのまま重ね餅になって倒れる2人。マウントポジションを取った真田希望のぞみはそれだけでは我慢できません。

「お前ーっ!」

 と言うと、右拳を大きく振り上げました。それに対する広川雫の応えは、

「いいよ。殴りなよ」

 広川雫は覚悟を決めてここに来たようです。

 真田希望のぞみはほんとうに殴る気です。けど、その瞬間、真田希望のぞみは背後から視線を感じました。横眼でその方向を見ると、そこには数人の女の子の姿が。全員ランドセルを背負っていて、黄色い帽子を被ってます。どうやら真田希望のぞみより下の学年のようです。みんな、びっくり、または焦ってます。

「ち!」

 後輩にこんな姿を見せたら・・・ そう思うと、真田希望のぞみは立ち上がりました。そして倒れたままの広川雫を見て、

「来な!」

 2人は歩き始めました。


 ここは公園、金目ひなたたちが毎日毎日山際怜子から5,000円巻き上げていた公園のその場所です。

 真田希望のぞみは公園に着くまで広川雫に何を訊こうか? それともいっそうのことボコボコに殴ってしまおうか、ずーっと考えてました。が、公園に着くと先に広川雫が口を開きました。

「証拠、あるんだ」

 突然の発言に真田希望のぞみびっくり。

「え?」

 広川雫は自分のスマホを取り出し、それを真田希望のぞみに見せました。

「これに全部録画してあるんだ。私たちが山際れいちゃんに何をしたのか、これを見ればすべてわかるよ」

 もしそれが真実なら、それは真田希望のぞみが喉から手がでるほど欲しがってたもの。

 真田希望のぞみは反射的に手を伸ばし、そのスマホを取ろうとします。けど、土壇場で広川雫は手を引っ込めてしまいました。唖然とする真田希望のぞみ

「え?」

 真田希望のぞみは広川雫をにらみました。

「何よ! そのスマホ、渡しなさいよ!」

「ごめん。ただで渡すことはできないんだ」

 まさか、金の要求? いや、違うようです。広川雫はちょっともじもじして発言。

「わ、私と・・・ 私と友達になって欲しいんだ」

 思わぬ発言です。真田希望のぞみは唖然としてしまいました。私の無二の親友を殺しておいて、よくもそんなことを!

 広川雫は言葉を続けます。

「私、ずーっとずーっと一人きりだった。友達が欲しかった。本当に欲しかった。だからひなたたちが友達にしてくれたときは、とっても嬉しかった」

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