侵略者を撃つな! 50

 この一件で広川雫は金目ひなたに憧れました。それまでずーっとひとりぼっちだった広川雫は、自分の強い意志で金目ひなたのグループに入ったのです。

 けど、今は真逆。なんで私はこいつらに従ってる? なんで私はこのイジメに参加してる? なんで、なんで?・・・

 広川雫は今すぐこの場から逃げ出したい気分。でも、広川雫にそれだけの決断力はありませんでした。


「よーし、もいっか!」

 それは金目ひなたの発言。そのまま広川雫を見て、

広川ひろちゃん、もういいよ」

 それを聞いて広川雫はスマホを降ろしました。そして心の中で「ふーっ」とため息をつき、こう思いました。

「終わった・・・」

 金目ひなたはしゃがむと、山際怜子の顔をのぞき込みました。そしてドスの効いた声で、

「明日5,000円持って来ないと、この続きを撮るよ。わかってんよね!」

 金目ひなたは山際怜子の脱ぎ捨てた服を見ました。そしてパンツだけを拾い上げ、

「これは金になるかな? もらっておこっか」

 金目ひなたは片岡愛美と飯島莉桜りおを見て、

「行こっか」

 2人はそれに応えます。

「うん」

 3人は一緒に歩き始めました。

「ええ? ま、待って・・・」

 広川雫も慌ててそれに続きました。

 山際怜子は仰向けのまま、何も動きません。両眼から流れ出てる涙だけは止まることはありませんでした。

 広川雫は一度振り返ろうとしました。でも、しませんでした。後ろめたさがそれをさせなかったようです。


 その日の夜、9時くらいのことでしょうか? 1人の女の子が歩行者用の陸橋から真下に飛び降りました。ちょうどそこに電車がやってきて、女の子の身体はぐしゃっと轢かれてしまいました。

 女の子の肉体はバラバラ、ミンチそのもの。背負ってたランドセルさえ、原形をとどめてませんでした。

 女の子の身元判明は困難を極めました。ようやく身元が判明した時刻は翌朝、陽が昇り始めた時刻でした。


 陽は完全に昇りきり、小学生たちの登校時刻。それも一段落しました。

 今は朝のホームルームの時間です。けど、山際怜子や金目ひなたが所属するクラスでは、いつまで経っても先生は来ません。児童たちはざわめいてます。そんな中、真田希望のぞみは無人の山際怜子の机が気になってしょうがないようです。

 真田希望のぞみは昨日の別れ際の山際怜子を思い出し、心の中でつぶやきました。

「あのあと何かあったの? それともただの風邪?・・・」

 一方金目ひなたは、自分の席に静かに座ってました。席の近い片岡愛美と飯島莉桜りおは、何事なにごとかとおしゃべり。広川雫は何かそわそわしてます。

 突然ガラッと引き戸が開きました。その音でざわついてたクラスが一瞬で静かになりました。引き戸を開けたのは先生でした。ただならぬ雰囲気を醸し出してます。それを見て広川雫は何かを感じました。広川雫は反射的にスマホを取り出し、何か操作し、机の上に置きました。

 先生はつかつかつかと教壇まで歩き、こう言いました。

「あ~ みんなには残念な話をしないといけなくなった。実は・・・

 昨日の夜、山際怜子が亡くなった」

 それを聞いて教室中がびっくり。

「えーっ!」

 真田希望のぞみは口を開けたまま、フリーズ。

「そ、そんな・・・」

 広川雫も顔がこわばったまま、フリーズ。片岡愛美と飯島莉桜りおは苦笑い。一方金目ひなたは特に反応してないようです。クラスメイトが亡くなったというのに、にこやかなまま。

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