侵略者を撃つな! 32

「私は生まれつき首が長すぎて、そのせいでずーっと首の痛みで悩んでいた。そこで思い切って首にぐる~と金属プレートを入れた。この線はそのときの手術痕しゅじゅつあとにするんですよ!」

 その日向の説明に隊長は、ちょっとびっくりして応えました。

「ええ、金属プレート? リング状の金属プレートか? いや~ いくらなんでもそれは・・・」

「一応街を歩くときは首にチョーカーを巻く。でも、新しい学校に行ったら絶対このつなぎ目に気づかれるから、前もって首を手術したとみんなに教えておく」

「おいおい、そんなにまでして首をはずしたいのか?」

「ええ。隊長はデュラハンを知ってますよね」

 デュラハン。それはアイルランドやスコットランドに伝わる首のない、または首が胴体から独立していてる妖魔のこと。マニアな隊長は今の日向の質問に、デュ○○ラのセ○テ○や亜○○○○は語りたいの町○子を瞬時に思い浮かべました。そして日向に質問を返しました。

「なんでデュラハンを知ってるんだ?」

「昔小説で読んだんですよ」

「小説? ラノベか? ホラーか?」

「んー、ホラー小説。子ども向けの」

「そっか」

 隊長はラノベと応えたらアニメの話をする気でしたが、子ども向けのホラー小説と応えたので、やめておきました。

 日向の妄言が続きます。

「私もいつかは自分の首を小脇に抱えて街を歩きたいなあ・・・」

 隊長は呆れたという顔をして、

「ま、首と胴体を完全につなぐ手術はしないでおくが、人前で首をはずしたり、持ち歩いたりする行動は絶体禁止だぞ!」

 日向は残念という顔をして、

「はい、わかりました」

 隊長と日向が乗るセダンの行く先にテレストリアルガードの基地が見えてきました。日向はここでテレストリアルガードの隊員日向愛として、新しい人生をスタートさせるつもりでした。けど、現実はそんなに甘くはないようです。


 ここはテレストリアルガード基地サブオペレーションルーム。今引き分けの自動ドアが開きました。いつもの場所に座ってた上溝隊員が振り返り、

「お帰りなさい」

 入室してきた隊長が応えます。

「ただいま」

 隊長の横に小さな人影があります。日向新隊員です。首にはすでに紺色の太いチョーカーがあります。上溝隊員はその日向隊員を見て、

「隊長、そのは?」

「日向愛。新しい隊員だよ」

 日向・・・ 上溝隊員はこのが金目ひなただとその名で瞬時に気づきました。そして頭の中が複雑になりました。

 金目ひなたはなんら落ち度のないクラスメイトをイジメて自殺に追い込みました。その天罰か、ひなたが乗ってた飛行機が墜落。乗員乗客123人中122人が死亡(公式発表では全員死亡)。唯一生き残った乗客は、なぜか金目ひなた。

 ひなたも瀕死の重傷を負いましたが、首を切断し、テレストリアルガードの隊員で脳死してしまった海老名隊員の胴体につないだのです。

 上溝隊員と海老名隊員は同じ女性。そのせいかとても仲のいい同士でした。そんな仲のよかった海老名隊員の胴体に、こともあろうに極悪人金目ひなたの首をつないだのです。しかも隊長は、このをテレストリアルガードに招き入れようとしてます。上溝隊員が複雑な思いになるのも当然です。

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