侵略者を撃つな! 29

 2日後、ここはテレストリアルガード研究開発部門の研究所ラボの研究室。医療用のイスに少女の身体が座ってます。検査着を着てます。頭部はなく、首の切断面には金属製かセラミック製のプレートが取り付けられています。よーくみるとそれはプレートではなく、カメラのシャッターのような構造になってます。実はこの身体は、海老名隊員の亡骸なきがらです。

 その上を見ると、少し後ろの位置に金目ひなた改め、日向愛の頭部があります。いつものように両眼、両耳の間にヘッドホンのような器具があり、それで頭部を挟み込んでいて、上からぶら下がってる状態になってます。

 日向の首の切断面にはやはり金属製かセラミック製のプレートがはめ込んであり、そのプレートはシャッターのような構造になってます。前回までこのプレートからたくさんのホースやコードが飛び出してましたが、今はホースとコードがそれぞれ1本ずつ飛び出してました。ホースはど真ん中に、コードは一番後ろについてます。日向の眼は閉じてました。

 これを見ている隊長と南原主幹。その周りには10人ほどの研究員が見えます。南原主幹がぽつり。

「いよいよですね」

 隊長は応えます。

「ああ」

「この手術が成功したら、次はキメイラのような人工生命体を創りたいですね」

 その南原主幹の発言に隊長は、ちょっと嫌悪感を覚えました。

 南原主幹が宣言します。

「では、始めます!」

 南原主幹は眼で合図を送りました。すると女性研究員が3人、日向の頭部の背後に廻りました。1人は頭部を両手で挟み込むように持ち、1人は右のヘッドホンのような器具に手を掛け、もう1人は同じように左のヘッドホンのような器具に手を掛けました。

 南原主幹は前方から日向の首に近づき、右手で日向の首の頭頂部を鷲掴みし、左手で首の切断面から出ているホースを握りました。隊長はそれを見て、

「お、おい、それは生命維持に必要なホースだろ。そんなに手荒に扱っていいのか?」

「あは、大丈夫ですよ。何回もリハーサルしてるし、たとえ不慮の事故でホースが外れたとしても、30分間は生きてけますよ。

 では、行きます!」

 南原主幹はホースをさっと抜きました。そして眼で合図。それを見た2人の女性研究員がヘッドホンのような器具を左右同時にはずしました。日向の頭部はもう1人の女性研究員が両手で保持する形になりました。

 女性研究員はそのまま2・3歩進み、海老名隊員の首の切断面に日向の首の切断面を接触させました。このとき日向の顔は正面ではなく、1時半の方向に。女性研究員が左45度首を廻すと、カチッという音が。

 この瞬間日向の首の切断面のシャッターが開き、同時に海老名隊員の首の切断面のシャッターが開きます。それぞれの肉体からホースやコードが延びてきて、同じ色、同じ太さのホース・コードが自動的にコネクト。ホースの中では体液が流れ始めました。

 南原主幹は振り返りました。そこにはディスクトップ型のパソコンが載ってる机があり、それを1人の男性研究員が操ってます。南原主幹が質問しました。

「どうだ?」

 男性研究員が応えます。

「はい。ランプオールグリーン。すべて正常につながってます」

「よし、起床だ。電気ショック!」

「はい!」

 日向の首の背後、うなじの一番下の位置についてるコードから電気が伝わり、日向の眼がゆっくり開きました。

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