侵略者を撃つな! 27

 中原さんは隊長の疑問に応えます。

「昨夜技術開発部門と本部が合同で会議を開いたんですが、そろそろひなたさんの手術が終わるところなんですが、それに引き続き黒部隊員のメガヒューマノイド改造手術を行うことに決定しました!」

 なんとも唐突な提案・・・ いや、これは提案ではありません。頭ごなしの命令です。その発言に寒川隊員が反応しました。

「ええ?・・・」

 寒川隊員は約1ケ月後、すみれ隊員とともに折り紙コンサートホールでコンサートする予定になってます。無名の歌手がホールでコンサートするとなると、ある程度の宣伝が必要になります。寒川隊員は一定以上の給料をもらってますが、そこまで金もないし、伝手つてもありません。何度も何度もストリートライヴを開いて、呼び込みをしないといけないのです。なのにここですみれ隊員をメガヒューマノイド改造手術で取られてしまったら・・・

 隊長はそんな寒川隊員の気分を察しました。そしてモニターの中原さんに質問しました。

「その手術、どうしても必要なんですか?」

「ん? 黒部隊員は一度みずからの意志でメガヒューマノイドを希望しましたよね。あなたはそれを承認したはず」

 そう。隊長は一度すみれ隊員のたっての希望を聞いて、すみれ隊員のメガヒューマノイド改造手術を承認してました。けど、あのときの主幹は前任の下島さん。今と事情が異なってます。

 中原さんは発言を続けます。

「香川さん、これはテレストリアルガード本部で決まったことですよ」

 隊長の反論。

「なんでその会議に私を参加させなかった!?」

「さっきも話した通り、現場のトップであるあなたから一度承認を得ていたので、必要ないと判断しました」

「くっ・・・」

 隊長は反論しようがありません。

 モニターの中、今度は南原主幹の発言。

「今からそちらにクルマを送ります」

 隊長。

「いや、オレが送っていくよ」

 南原主幹。

「わかりました」

 テレビ電話が切れました。寒川隊員は心配そうに隊長に話しかけました。

「隊長・・・」

 隊長は寒川隊員を見ました。苦虫を噛み潰した顔です。次にすみれ隊員を見ました。

「すみれ、入院の用意をしてこい」

 それを聞いて寒川隊員はびっくり。

「ええ? 隊長はこの手術に賛成なんですか?」

「別に賛成はしてないよ。本部が決めたことはオレたち現場のものは黙って従わないといけないんだよ」

 寒川隊員は声を荒げました。

「だからって、いくらなんでもこれはないでしょ! いきなり電話をかけてきて、改造手術だ、今から迎えに行くだなんて! こっちの都合も考えろって!

 オレとすみれは1ケ月後に初コンサートがあるんです! 毎日毎日ストリートライヴをやって人を呼び込まないといけないんですよ! こんなことされちゃ、この計画はおじゃんだ!」

 隊長は冷静に応えました。

「この前メガヒューマノイド改造手術は1週間かかると言ってたな、すみれの場合は。1週間くらいは抜けても大丈夫じゃないのか?」

 ほぞを噛む寒川隊員。

「くっ・・・」

 寒川隊員は横目でぼーっとしているすみれ隊員を見ました。

「くっ!」

 寒川隊員は突然すみれ隊員の肩口をしたたかに叩きました。

「おまえもなんか言えよ!」

 それを見て隊長がびっくり。

「ええっ?」

 隊長は右手で寒川隊員の左二の腕を掴みました。

「おい、やめろ!」

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