侵略者を撃つな! 12

 ちなみに、路上ライヴは許可を申請してもなかなかおりませんが、そこはテレストリアルガードの隊長、簡単に取ってしまったようです。


 翌日、ここはライヴハウスセブンスカーペットの外観。「本日の出演 バイオレット&ユタカ」の手書きの看板が見えます。2人の名前の上にはさらに大きな字で「ユラン岡崎」の名前がありました。陽はほとんど沈んでます。


 ライヴハウスステージ、寒川隊員がギターを弾き、すみれ隊員がシャウトしてます。2人ともいつもとは違う私服です。どうやらステージ衣装のようです。

 狭いライヴハウスとはいえ、観客は満杯、熱狂状態。寒川隊員はギターを弾きながらそれを見て、思いました。

「すごいオーディエンスだ。ふふ、オレが初めてライヴハウスに立ったときは、3人しかいなかったのに・・・」

 寒川隊員は熱唱してるすみれ隊員の後姿を見て、

「昨日ライヴの告知ができなかったのに、こんなに人を集めてしまうんだから、こいつ、絶対ホンモノだよ!」

 今日も観衆の後方に私服の隊長の姿があります。隊長は今日も嬉しそうです。

 すみれ隊員が歌い終わりました。盛り上がる観客。ここで寒川隊員が一言。

「みんな、ありがとう! じゃ、また今度!」

 すると観衆から惜しむ声が。

「ええ、もう?

「まだ3曲じゃん!」

「ごめん、今日は3曲までという約束なんだ」

 と言うと、寒川隊員はすみれ隊員の手を取って、舞台袖に入りました。

 観衆の中の1人、20代前半の男性が、ぽつりとつぶやきました。

「あ~あ、もうおしまいか・・・ 帰るとすっか」

 それを聞いて彼の横にいた彼女がびっくり。

「ええ? ちょ、ちょっと待ってよ!」

 彼は彼女を見ました。ちなみに、彼女も20代前半です。

「ん?」

「今日のメインアクトはユラン岡崎て人だよ。オープニングアクトを聴いたのにメインアクトを聴かないないんて、なんかもったいないじゃん!」

「ええ? オレが興味あるのはさっきまで歌ってたバイオレットて歌手だよ。次に出てくる歌手なんか、ぜんぜん興味がないって」

「でも、同じ尾崎豊をリスペクトしてる人だよ。きっと気に入るからさあ! 最後まで見ようよ!」

「う、うん・・・ まあ、せっかく来たんだから、ちょっとだけ聴いてみるか」

「ありがと」

 彼女はニコッとしました。


 楽屋に寒川隊員と彼に手を引かれたすみれ隊員が戻ってきました。ライヴハウスの楽屋と言えば出演アーティストのジクネチャーなどの落書きだらけの汚い部屋が多々ありますが、この部屋は落書き禁止の表示があるせいか、割ときれいでした。

「お先に勉強させていただきました」

 と、寒川隊員があいさつ。するとあっちを向いて座ってギターを弾いてる男性が、横目で後ろを見て応えました。彼がユラン岡崎です。

「お疲れさん」

 と言うと、ユランは立ち上がりました。その身長は190cm近くはあるようです。横幅もかなりありそう。どうやら日本人とヨーロッパ人のハーフのようです。顔はヒゲが伸びっぱなし。縮毛の髪の毛はあまり手入れしてないようでボサボサ。なんかクマのようです。

 ユランはギターを持ったままドアから出て行きました。と、ユランと引き換えに隊長が入ってきました。

「さあ、帰ろう!」

 すると寒川隊員はすみれ隊員を見て、

「いや、隊長。先に彼女を連れて帰ってください」

「ん?」

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