君のテレストリアルガード 22
隊長はまだ茫然としてる上溝隊員を横目で見ました。
「上溝隊員」
上溝隊員ははっとしました。
「あ、はい!」
「恥ずかしいところを見せてしまったな。すまん」
隊長も自動ドアを開け、出て行きました。上溝隊員はまだ茫然としました。
それから数時間後、ここはテレストリアルガード基地の3階建てのビルの玄関の前。今ここにテレストリアルガードのカラーリングが施されたRV車が駐まってます。そのクルマを背に寒川隊員とすみれ隊員が立ってます。2人は隊長と向き合ってました。隊長。
「寒川、あとは頼むぞ」
「はい」
どうやらすみれ隊員は(彼女の範囲内で)正気に戻ったようです。これからメガヒューマノイド改造手術を受けるために病院に行くようです。
寒川隊員はまず後部座席のドアを開け、持っていたすみれ隊員のボストンバッグをシートに置き、次に運転席のドアを開け、乗り込みました。すみれ隊員は隊長に手を借り、助手席に乗り込みました。
エンジンがかかり、RV車が走り出しました。隊長はそのRV車を見送りました。と、ふとその脳裏に海老名隊員のセリフが再生されました。
「すみれには死神がついてます。関係した人はみんな不幸になります」
さらに今日の海老名隊員の発言。
「あの女、死神が憑りついてるんだと思ってました。けど、実際会ってみたら、死神そのものだったんですよ」
「ふっ、そんなバカな」
隊長は苦笑いのような笑みを浮かべました。
「なんじゃーっ!」
ドスの効いた怒号が響きました。ここはビルの工事現場。建物はある程度完成してますが、外壁や内装はまだコンクリート剥き出しのままです。
その建築現場の室内。完成後は集会場になるのか、かなり大きな部屋です。ここもコンクリートを打設しただけの状態。
今初老の男が厳しい眼で前を見てます。男が見ているのは20代前半の男。茶髪で作業着もだらしなく着ています。この男の後ろには3人の男がいて、この3人も茶髪、もしくは髪の毛に剃りこみがあります。チャラチャラとしたイヤリングを付けてる者、唇の端にリング(ピアス)をしてる者もいます。3人とも10代後半から20代前半のようです。
先頭の男は横内。後ろにいる3人は田村・高村・山下。怒号を飛ばした男は横内です。横内の怒号が続きます。
「オレたちゃ毎日毎日ここに来て、お前らのためにちゃんと働いてるんだ! 首とはなんじゃ!」
すると初老の男も言い返します。
「何が毎日、毎日だ! お前ら、今日が3日目だろ!
お前ら、型枠解体工だろ。型枠解体工は解体した型枠支保工や単管パイプや型枠を片づけ、掃除するまでが仕事だ。お前らはなんだ? 解体したら解体しっぱなし。ろくに仕事もしないでタバコばっかりスパスパ吸ってやがって!
お前ら、今日中抜けして、パチンコ屋に行ってたろ! そんなやつ、仕事に使えるか!」
横内は、
「はあ、おっさん、なんや、痛い目に遭いたいんか!?」
と言おうとしましたが、初老の男の後ろには数人の作業員がいます。全員怖い顔、まるでヤクザ。半グレの横内もケンカを仕掛ける度胸はないようです。
「ちっ、覚えてろよ!」
と言うと、初老の男の横を通って出ていきました。田村・高村・山下も横内に続きます。3人とも初老の男の横を通り過ぎるとき、初老の男にガンを飛ばしました。中には中指を立てる者も。
初老の男は振り向き、後ろにいた作業員たちを見ました。
「さあ、みんな、仕事に戻ろう!」
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