君のテレストリアルガード 21
隊長は寒川隊員の顔を見て、声を発しました。
「今日からメガヒューマノイド改造手術のために入院させる予定だったが、これじゃムリだな。延期するか・・・」
それを聞いて寒川隊員は内心慌てました。寒川隊員はすみれ隊員と歌手デビューする予定を本気で立ててました。なのにすみれ隊員は突然メガヒューマノイドになると言い出したのです。更にこのアクシデント。このままだと寒川隊員の夢が遠のいてしまいます。
なんとしても今は、すみれ隊員になるべく早くメガヒューマノイドになってもらい、歌の練習を再開させないと・・・
寒川隊員は隊長の顔を見て、
「隊長。なんとかしますんで、少し待ってください」
「そっか」
と言うと、隊長は振り返りました。その瞬間、隊長の眼はきつくなりました。
ここはサブオペレーションルーム。今自動ドアが開き、鬼の形相の隊長が入ってきました。
「おい!」
そのドスの聞いた声を聞いて、いつもの席でいつものようにのほほーんと雑誌を読んでた上溝隊員はびっくり。一方、卵型のテーブルでいつものようにノートパソコンを広げ、インターネットをやってた海老名隊員は、上目遣いで斜め横の隊長を見ました。隊長は海老名隊員の右側に立ち、
「お前、すみれに何をした?」
海老名隊員はノートパソコンのディスプレイを見て、
「別に・・・ あなたは死神。あなたがいると将来テレストリアルガードは大変なことになると言っただけ。
あの女、死神が憑りついてるんだと思ってました。けど、実際会ってみたら、死神そのものだったんですよ」
隊長は真っ直ぐ真下に伸ばした両手をきつく握りました。
「くっ!
オレたちゃ家族みたいなもんだろ! なんでこんなことすんだよ! オレからしてみりゃ、おまえもすみれも大事な娘だ! 姉妹のようなもんじゃないか!」
けど、海老名隊員はそれを無視するように、ただひたすらインターネットに興じてます。隊長の怒りは頂点に達しました。もう我慢できません。隊長の眼は海老名隊員が操作しているノートパソコンを捉えました。ノートパソコンを叩き潰す気です。でも、海老名隊員はそれを読んでました。海老名隊員はノートパソコンを閉じると、それをひざの上に載せました。その眼は見てる対象を小バカにしてる目です。
「このーっ!」
隊長は右手の拳を振り上げました。そのとき海老名隊員は心の中で叫びました。
「痛覚カット!」
次の瞬間、隊長の拳が海老名隊員の左ほほにヒット。かなり強く殴られたらしく、海老名隊員が座ってるイスは右にくるっと回転し、海老名隊員の身体は床に激しく転げ落ちました。
「きゃーっ!」
これを見ていた上溝隊員は、思わず悲鳴をあげてしまいました。それを聞いて隊長は、ふと我に還りました。
一方海老名隊員は大事そうにノートパソコンを抱いたまま、ひょいと立ち上がりました。
さすがメガヒューマノイド。これくらいじゃ壊れません。ノートパソコンも無傷です。けど、唇の左端から血が流れ出てきました。海老名隊員はその血を左手の甲でぬぐいました。そしてその血を見ました。ちょっと驚いてるようです。頭蓋骨をチタン合金に置換したと言っても、そこまで万能ではなかったようです。
海老名隊員はそのまま何事もなかったように歩き始めました。そして隊長とすれ違った瞬間、隊長の顔を横目で見て、
「あいつ、本当に死神ですよ。そのうちわかりますから」
と言って、そのまま引き分けの自動ドアを開け、出て行きました。
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