君のテレストリアルガード 19

 メガヒューマノイドに復帰した海老名隊員の次の夢は、18歳の誕生日に隊長と結婚して、初夜に隊長の子どもを身ごもること。どうやら反重力エンジンを取り付けるとなると、妊娠は諦めないといけないようです。海老名隊員は反重力エンジンは諦めるしかありませんでした。

 でも、海老名隊員が感じてた不満と不安は何一つ解消してません。いや、かえって増してしまったようです。さらにその不満は隊長にも向けられました。この人は自分よりすみれの方を大事にしてるんじゃ? もし戦争になったら、私の方がずーっと使えるのに・・・

 疑念。海老名隊員は何か思い切った行動を起こす気です。


 ここは月夜のテレストリアルガード基地。その地下にある廊下です。寒川隊員とすみれ隊員が歩いて来ます。2人があるドアの前に立ち止まりました。すみれ隊員の私室のドアです。寒川隊員がすみれ隊員の顔を見て、

「じゃ、これで」

「うん」

 すみれ隊員は応えることができました。つい数日前だったら無表情のまま、応えることができなかったのですが。

 一本引きの自動ドアが開き、すみれ隊員は部屋に入りました。すみれ隊員は振り向き、寒川隊員の顔を見ました。寒川隊員。

「じゃ、また明日」

 自動ドアが閉まりました。


 すみれ隊員の私室。自動ドアが閉まると同時に、すみれ隊員が振り返りました。が、その瞬間、はっとしました。なんとベッドに海老名隊員が腰かけてるのです。その眼は何か企んでる眼です。

「お姉さん・・・」

 すみれ隊員はぽつりと言いました。それを聞いて海老名隊員は不快な顔を見せました。

「はあ、何言ってんの? なんの血縁関係もないでしょ、あなたと私と?

 ねえ、あなた、ほんとうにメガヒューマノイドになる気なの?」

 すみれ隊員は応えません。いや、反応しません。

「私はメガヒューマノイドになる理由があった。ふふ、いいことを教えてあげる。これからテレストリアルガードで何が起きるのかを。

 実はまた宇宙人が襲ってくんの。私の、そしてあなたの身体を木端微塵にした宇宙人が襲ってくんのよ!」

 すみれ隊員は今度はちょっと反応したようです。海老名隊員はそれに気づきましたが、構わず発言を続けます。

「テレストリアルガードは先頭に立ってやつらを迎え撃つの。わかる? メガヒューマノイドになるってことは、その最前線に立たないといけないってことなの! あなたにその覚悟はあるの?」

「わ、私は・・・」

 すみれ隊員はなんとか応えようとします。けど、途中までしか言葉が出て来ません。海老名隊員の発言が続きます。

「本当のことを言うとね、ここまでは隊長に教えてあるのよ。けど、これから言うことは、まだ隊長には教えてないわ。でも、あなたには特別に教えてあげる。よーく聞いてね。

 私とあなたは敵の母艦に突っ込む。後方支援は何もないわよ。あなたと私だけ。たくさんの光弾を避けながら、なんとか敵の母艦に突入するわ。

 敵艦の中で私とあなたはたくさんの敵兵を殺すわ。2人とも強力な銃を持っていて、一発光弾を浴びただけで敵兵は木端微塵に吹き飛んじゃう。あっという間に敵艦は敵兵の脳みそや内臓だらけになるのよ。

 あなたは最初のうちは必至で銃を撃ってたけど、あちらこちらに散らばってる内臓を見てあなたは思わずゲロっちゃう。それをきっかけにあなたは戦闘不能になるわ。そこに隊長が駆け付けてくる。

 隊長はあなたを助けようとするけど、あなたはちっとも動こうとしない。そうこうしてるうちにたくさんの敵兵がやってくるわ」

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