君のテレストリアルガード 6
隊長はちょっと考えました。そして、
「6年前君とすみれはずーっと昏睡状態だった。オレは毎日君たちを看守ってた。最初はメガヒューマノイド被験者の選定が目的だったが、2人を看てるうちにだんだん愛情が湧いてきた。
オレはユミル星人の水素核融合弾で大事な1人娘を亡くした。なのに今目の前にいる2人は、死の瀬戸際でなんとか踏みとどまっている。なんとかならないのか? オレは何度も何度も深く思ったよ。
そのうち君が目覚めた。オレは自分の娘が生き返ったと素直に喜んだよ。けど、すみれはずーっと目覚めなかった。最初のうちは心配してたが、そのうちテレストリアルガードの仕事が本格化して、いつしかすみれのことは忘れてしまった。
先日すみれが目覚めて社会復帰したと聞いてオレはとても喜んだよ。でも、社会は彼女の存在を許してくれなかった。この世に彼女の居場所はもうテレストリアルガードしかないんだよ」
「隊長は部下を2人殺されて、自分はクビになって、女神さんに日本中の街を破壊されてもいいんですか?」
「じゃ、君が止めてみろよ」
「え?」
「2週間もあれば、メガヒューマノイドに再改造できるんじゃないか?」
思っても見なかった提案を聞いて、海老名隊員の顔はぱっと明るくなりました。
「ええ~!」
「本当は夏休みに改造するつもりだったが、次の土曜日からにしよう。ゴールデンウィークに入るから、時期的にもちょうどいいんじゃないか?
どうだ。メガヒューマノイドに変身したら、君の予言した不幸の連鎖は、断ち切ることができるんじゃないか?」
「ええ、できますよ。できます!」
「ふふ、さっきまでの深刻な顔はどこへいっちまったんだ?」
「てへ」
海老名隊員は顔を赤めました。
いよいよ土曜日。いや、その1日前の金曜日。またもや異変が起きました。
ここはテレストリアルガード基地サブオペレーションルーム。引き分けの自動ドアが開き、大島さんが、
「やぁ、みなさん、こんにちは」
と言って入ってきました。サブオペレーションルームではテレストリアルガード作戦部門の隊員全員が揃っていて、一斉に振り向き、大島さんを見ました。
「こんにちは」
大島さんはつけっぱなしのテレビを見ました。
「困ったねぇ、これは・・・」
テレビの中は記者会見のようです。かなり厳しい目つきのメガネの男がしゃべってます。この男は城所祐樹。弁護士です。30代てところでしょうか? 弁護士らしく、スーツをビシッと決めてます。
その横にはかなり恰幅のいい中年の女性が座ってます。女性の方は人権上の問題か、顔を映してません。首から下を映してます。
2人の前にはたくさんの記者がいます。フラッシュがまばゆく光ってます。
城所弁護士が発言してます。その右手にはA5サイズの写真があり、それを記者団に提示してます。写真には黒部すみれの姿がありました。
「この女が黒部すみれです!」
城所弁護士は隣の女性を見て、
「この女がこちらの大事な娘さんを殺しました!」
続けて中年女性の発言。
「この女は何回も何回もうちの娘にケンカを売ってました。うちの娘はずーっと我慢してましたが、ついに切れてしまい、1対1のケンカになり、うちの娘は一方的に蹴り殺されてしまいました。
娘は顔を何回も何回も踏まれたんですよ。遺体を見ましたが、顔はぐちゃぐちゃでした。こんなひどい殺され方てあります? せっかく18歳まで育てたというのに・・・ 私はこのすみれて女が憎いです!」
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