赤ン坊殺しの英雄 11

 クルマのドアが開き、橋本さんが降りました。と、ここで緊急事態が発生。サイレンがけたたましく鳴ったのです。はっとする橋本さん。

「な、なんだ?」

 サイレントともに館内放送が。

「お客様に申し上げます。現在地球に向かってかなりの数の飛翔体が飛行してます。ユミル星人の水素核融合弾と思われます。お客様は直ちに地下2階のシェルターに避難してください! 繰り返します・・・」

 ワンテンポ置いて非常ドアが開き、「うわーっ!」と人が流れ込んできました。次から次へと人があふれ出てきます。平日の昼間のせいか、女性が多いようです。さらにエレベーターの扉が開き、たくさんの人が流れ出てきました。ちょっと横を見てみると、デパートの店員がぶ厚い扉を開けてました。

「みなさん、こちらです! この中に避難してください!」

 人々がその扉の中に入って行きます。いつの間にか橋本さんも、その方向に向かって駆けてました。

「お、おい、マジかよ?」

 橋本さんもぶ厚い扉の中に入り、幅1.8m程度の階段を駆け降りました。階段を下るとそこは殺風景な巨大な部屋でした。橋本さんの後ろからたくさんの人々が雪崩れ込んでます。

 ここで現在の橋本隊員。

「あとでわかったんだが、そのデパートは地下1階と地下2階が駐車場だったんだが、地下2階は第一次ユミル星人襲撃を機に丸ごとシェルターに改造されていたんだ。平日の昼間だったせいか、シェルターに逃げ込んでくる人はそれほどいなかったな。かなり余裕があった」

 再び地下シェルター。シェルターの観音開きのドアのそばにいたデパートの店員が、

「もういいか」

 と言うと、ドアを閉め始めました。それを見ていた当時の橋本さんがふと疑問を持ちました。今閉じた扉は階段の下にあるドア。ふつーの防火戸ほどの厚みしかありません。それに対し階段の上には、銀行の金庫のようなぶ厚い扉がありました。橋本さんはそれを思い出し、

「おい、階段の上の扉は閉めなくっていいのか?」

 と質問。扉を閉めた店員がそれに応えました。

「このドアは外から開けることもできますが、上の扉は一度閉めたら鍵がない限り、外から開けることができないんです!」

 さらに彼の側にいた女性定員が、

「外を歩いてる人が逃げ込んでくる可能性もあります。上の扉は閉めることはできません!」

 それを聞いて橋本さんは大声で怒鳴りました。

「バカ言うなよ! 爆弾が近くで爆発したらどうするんだよ! 水爆だろ? この扉が吹っ飛ぶんじゃないか? すぐに上に行って金庫みたいな扉、閉めてこいよ!」

 その声にびっくりしたらしく、このシェルターにたった1人いた赤ちゃんが泣き始めました。橋本さんはそっちの方向を見て、

「なんだよ、こんなときにギャーギャー、ギャーギャー泣きやがって!」

 赤ちゃんを抱いてた女性が平謝り。

「す、すみません!」

 けど、赤ちゃんは泣き止みません。橋本さんはさらに激怒。

「おい! 誰かそいつの口をふさげよ!」

「あんた、何言ってんだ! そんなことしたら、赤ちゃんが死んじまうだろ!」

 突然のその野太い声に、橋本さんは振り向いて怒鳴りました。

「なんだとーっ!」

 そこにはかなり大柄な男がいました。まるでラガーマンか柔道家。さすがの橋本さんもこれにはビビリました。

「うう・・・」

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