赤ン坊殺しの英雄 8

 女はアスファルトに着地。が、勢いをうまく吸収できず、アスファルトの上を滑り、万年塀に接触してようやく身体を止めました。なお、このとき万年塀はガラガラっと崩れ落ちました。

 女は振り返り、

「ふふ、避けたか。次こそ・・・」

 が、ここでパトカーのサイレンの音が。はっとする女。さらに橋本隊員の背後に倉見隊員と寒川隊員が現れました。叫ぶ倉見隊員。

「橋本さーん!」

 さらに、

「おーい、橋本ーっ!」

 その声は女の背後から。女が振り向くと、隊長と上溝隊員が駆け付けて来ます。ほぞを噛む女。

「くっ、あともうちょっとだったのに・・・」

 女の背中のエアジェットが点火。女の身体は急上昇。そのまま闇に消えました。それ見送る橋本隊員。橋本隊員は女の顔を思い出し、

「ん、待てよ? あの女、まさか・・・」

 倉見隊員と寒川隊員、隊長と上溝隊員が橋本隊員の元に到着しました。倉見隊員。

「大丈夫ですか?」

 それに応える橋本隊員。

「ああ、大丈夫だ」

 橋本隊員は隊長を見て、

「すみません。逃げられました」

「うん・・・ まあ、仕方がないな」

 ここにパトカーが1台到着。警官2人がパトカーから降りてきて隊長に敬礼。隊長は警官に事態を軽く説明。そしてテレストリアルガードの4人の隊員を見て、

「みんな、あとは警察に任せて、今日は引き上げよう!」

「はい」

 4人は一塊になって歩き始めました。と、寒川隊員は頭にある疑問が浮かび、それを直接言葉にしました。

「あいつ、なんだったんでしょう?」

「ああ、あれはメガヒューマノイドだろ」

 と隊長は応えようとしましたが、やめとくことにしました。今テレストリアルガード作戦部門の隊員でメガヒューマノイドを知ってる(覚えている)人は、隊長と海老名隊員のみ。その海老名隊員は当のメガヒューマノイドです。海老名隊員のことを考え、ここは黙っておくことにしました。で、代わりに、

「さあな」

 と応えました。

 なお、3機のドローンですが、自動的にそれぞれのワンボックス車に帰るように設定されてました。


 隊長が大型ワンボックス車に帰ってきました。1号車です。と、1号車の前に女神隊員が佇んでました。なお、女神隊員の帽子とウィッグは元に戻ってます。

 隊長は女神隊員に質問しました。

「ん、どうして中に入らないんだ?」

「それが、海老名さんが・・・」

「え?」

 隊長がスライド式のドアのノブに手をかけました。けど、鍵がかかっているらしく、動きません。

「鍵がかかってるのか?・・・」

 隊長はちょっと考えると、ドアをノックしました。

「おーい、えびちゃん!」

 しかし、反応がありません。隊長は仕方なくクルマの鍵を取り出し、施錠を解除しました。


 1号車車内。スライドドアが開き、隊長が乗ってきました。中の機材の前には海老名隊員が静かに座ってます。かなり憮然とした表情です。隊長が話しかけました。

「おい、いったいどうした?」

 けど、海老名隊員の返事がありません。返事どころか、反応もありませんでした。

「仕方がねぇなあ」

 隊長はそう言うと、1号車から一度降り、運転席へ。そして助手席に女神隊員を乗せ、エンジンを点火。1号車を発車させました。


 翌朝、ここはテレストリアルガード基地サブオペレーションルーム。今橋本隊員がテーブルに座り、ノートパソコンでインターネットを見ています。ディスプレイには3人の男性の写真が映ってました。

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