赤ン坊殺しの英雄 4

 別の時間貸し駐車場に駐車してる大型のワンボックス車。3号車です。こちらの内部も1号車と同じ造り。ここには橋本隊員と倉見隊員が乗ってます。今倉見隊員が天窓サンルーフからドローンを放ちました。橋本隊員がスマホを握ってます。

「今放ちました!」


 3機のドローンはだいたい1つになり、夜空を飛んでます。下はいかにも住宅街て感じの路地。今ここに女性が1人歩いてます。白くて華美なワンピース。白くて大きなつばの帽子。顔を見ると前髪が異様に長く、鼻まで隠してます。そう、この女性は女神隊員です。

 なお、女神隊員以外の6人は、テレストリアルガードの隊員服を着てます。


 3号車内。橋本隊員と倉見隊員がヘッドホンを被ってモニターを見てます。そのモニターには夜道を歩く女神隊員が映ってます。ドローンの映像らしく、俯瞰です。

「おいおい、こんな真夜中にこんな服装で歩くか、ふつー?」

 その橋本隊員の発言に倉見隊員が少し笑いながら応えます。

「ま、通り魔をおびき寄せる目的で歩いてるんだから、ちょうどいいんじゃないですか?

 しかし、本当に通り魔は現れるんですかねぇ?・・・」

 今度は橋本隊員が応えました。

「今日はえびちゃんが作戦に参加してるだろ」

「そう言えば・・・ じゃ、えびちゃんの力で?」

「ふふ、だろうな」

 海老名隊員の超能力は海老名隊員と隊長しか知らない秘密です。けど、それは建前。テレストリアルガードで何回も発生する不思議な現象に触れて、それ以外の隊員もいつしか海老名隊員の超能力に気づいてしまったようです。ま、中学生がテレストリアルガード作戦部門にいること自体不自然。何か秘密があって当然ですよね。

 けど、海老名隊員のもう1つの重要な秘密は、まだ誰にも気づかれてないようです。


 今度は隊長と海老名隊員が乗る1号車の中です。この2人もヘッドホンをしてモニターを見てました。と、隊長は何かに気づき、はっとしました。

「ん?」

 ドローンの1機がゆっくり下がっていきます。1号車のモニターに女神隊員の顔面が映し出されました。女神隊員はつばの大きな帽子を被ってる上に、眼はウイッグで隠しています。なのに特徴的な単眼が丸見え。なんと単眼がまばゆく光ってるのです。その光はウイッグさえも突き抜けてました。

「おいおい、なんだよ、これは・・・」

 隊長はスマホを握り、

「おい、なんで眼が光ってんだ?」

 女神隊員は右耳にはスマホのイヤホンが入ってました。

「え、私の眼は暗闇だと光りますよ、知らなかったんですか?」

 車中の隊長はびっくり。

「ええ、輝板タペタムかよ?」

 隊長は思い出しました。

「そういやあいつの星じゃ、一日は40時間と言ってたな。夜は20時間、昼は20時間。これじゃ自然に夜目が効くようになるな・・・」

 海老名隊員の質問。

「それって、ネコの眼と同じ?」

「ああ。ネコの眼は外から入ってきた光りを増幅させる機能が入ってるんだ。だから夜ネコの眼を見ると光って見える。難しい言葉で輝板タペタムていうやつだな。女神隊員の星では夜は20時間。これじゃ眼に輝板タペタムがついて当然か・・・

 しかし、これじゃあなあ・・・ まったくめんどくさいやつだ」

 隊長は再びスマホを握り、

「おい、女神、帽子をもっと目深まぶかに被れ!」

 それを聞いて女神隊員はびっくり。

「ええ?・・・」

「このままじゃ、あんたの秘密がバレてしまうんだよ! 通り魔はオレたちが見張ってるから、ともかく帽子をもっと目深まぶかに被れ!」

「あ、はい・・・」

 女神隊員は言われる通り白い帽子を深く被りました。

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