魔法少女にはまだ早い 12
少女は自分の病室に帰り、ベッドに腰かけました。その顔は最高の笑顔です。香川さんがその前に立ち、腰を低くし、少女と視線の高さを合わせ、
「どうだった?」
「もう、最高! こんなにも早く歩けるようになるなんて!」
少女は大神さんを見て、
「大神さん、ありがとうございます!」
「ふふ、礼には及ばんよ。君も手術によく耐えた。苦しかったろ。でもなあ、まだもう1つ大きな手術が残ってるんだ」
「ええ、また手術ですか?・・・」
「ああ、背中にエアジェットと呼ばれる推進器を取りつける手術だ。これがないと空を飛ぶことができないんだ」
空を飛ぶ。それは少女の切なる願いでした。これまで繰り返されてきた手術はとても苦しい手術ばかりでしたが、空を飛べると思うと、少女の顔にまた笑顔が浮かびました。
「飛びたい! 空を飛びたいです!」
「じゃ、明日手術だ!」
「え、明日?」
「ん、なんだ? 都合が悪いのか?」
「明日朝9時からパトロール魔女ジェニーがあるんです。それを見たい!」
「なんだよ、それ? アニメ?・・・」
ここで香川さんが口を挟みました。
「女の子に大人気なアニメですよ」
「はあ? 手術よりアニメを優先しろっていうのか?」
大神さんは呆れたという表情を見せますが、すぐに顔色を変え、
「OK! 君は苦しい手術に何度も何度も耐えてきたんだ。それくらいの我がままは許してやろう!」
それを聞いて心配顔だった少女の顔が、ぱっと明るくなりました。
「あ、ありがとうございます!」
「明日8時半に手術室に入ってもらうつもりだったが、9時半に変更な」
香川さんもうれしそうな顔を見せました。
翌朝8時半、いよいよパトロール魔女ジェニー放送開始の時間となりました。少女は固唾を呑みました。なぜか香川さんも一緒にこの番組を見てます。少女はその香川さんを横目で見て思いました。
「香川さんて絶対ジェニーのファンだよね。私より一生懸命見てる・・・」
少女は心の中で苦笑しました。
なお、少女はベッドの中で半身起きた状態で、香川さんはその側のパイプいすに座った状態でテレビを見てました。
OP曲が終わり、いよいよ本編が始まりました。
魔女。それはとっくに滅んだと思われてました。しかし、近年世界各地で妖魔が復活。それに合わせるように魔女も復活してました。
復活した魔女はたいてい重罪を働きました。危惧したEU法王庁は、対魔女専門のWBG(ウィッチバスターグループ)を結成。圧倒的な法力であっという間にEU域内の魔女をすべて退治してしまいました。
WBGの次の目的は、EU域外の魔女。ますばジェニーに狙いを定めました。ジェニーはEU教皇庁が確認できた妖魔の中で最大の魔力を発揮できるリリスと関係してたからです。
極秘裏に来日した男は、WBG最大の腕利き、ゲオルギウス。2メートル以上の屈強な男です。
ゲオルギウスは下校中のジェニーを待ち伏せしました。
「わ、私、何も悪いことしてないよう!」
「何言ってる。お前、魔女だろ。魔女は魔女の時点で悪だ! おまけにお前は、大悪魔リリスの配下にいたろ。とんでもない魔女だ! 神の名の下、お前を制裁する!」
命の危機を感じたジェニーは、箒に乗って逃亡しました。
実はジェニーは以前白人の老婆の魔女にこんな忠告をされてました。
「お前は正義を気取ってるが、魔女は所詮悪魔。人類の敵だ」
「わ、私は人類の敵なの?」
「どうしても人類に寄り添いたいなら、どんなことがあっても人類は攻撃しないことだな」
そんな忠告があったもので、ジェニーは人間を攻撃することができないのです。
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