私が愛した男《ひと》 20
隊長の背後から再びガリッという音。明らかに砂利を踏む音です。隊長は
「気のせい?・・・」
が、突然何もない下の方から何かが噴霧され、その霧状の物質が隊長の顔面を襲いました。
「くっ!・・・」
隊長の視野がいきなりぼやけてきました。
「くそっ・・・」
隊長はその場に倒れてしまいました。昏倒です。その直後、その場に半透明な男が出現しました。男の服装は先ほどのライダーと同じライダースーツにフルフェイスのヘルメット。
実はこの男、隊長がにらんだ通り、個人携帯用認識ステルス装置で身を隠してました。先のライダーが隊長に倒されたとき、隊長は最初水平に杖を振りました。今回も水平に
男はニヤッと笑いました。
「ふふ」
ほぼ同時刻、ここはテレストリアルガード基地。無残に破壊された格納庫。その前に5人の人影が見えます。近寄って見てみると、3人はスーツ姿。2人はテレストリアルガードの隊員服を着てます。ヘルメットを被ってる細身長身の人は女神隊員、低身長の人は海老名隊員です。どうやらさきほど隊長が言ってた事情聴取を行ってるようです。
女神隊員は身振り手振りを交えて、スーツ姿の3人にいろいろと説明してます。なお、スーツ姿の3人は、テレストリアルガード本部のお偉いさんです。
一方海老名隊員は最初のうちは平然とした顔で事情聴取に応じてましたが、あるところで突然何かを感じました。
「う?」
海老名隊員の顔がみるみる青ざめてきました。どうやら生理痛がぶり返したようです。説明に熱がこもっていた女神隊員ですが、ふと海老名隊員を見て異変に気づきました。
「ど、どうしたの、海老名さん?」
海老名隊員は苦笑するだけ。
「あはは・・・」
テレストリアルガードのお偉いさんは空気を読んでくれました。
「じゃ、今日はここまでにしておきましょうか」
女神隊員はその発言をした人を見て、軽く頭を下げました。
「あ、ありがとうございます」
数分後、ここはテレストリアルガード基地に唯一ある3階建てのビル。このビルの1階は地下へのエントランスとしての機能があり、2階も一般職員によって使われてますが、3階は現在未使用。ここはその1室。8畳ばかりの何もない部屋です。
今ドアが開いて、女神隊員と海老名隊員が入ってきました。女神隊員は壁に立てかけてあるパイプイスに眼が止まり、それを手にし、広げました。そして海老名隊員を見て、
「海老名さん、ここに」
「あ、ありがと」
海老名隊員はそこにドカッと座りました。海老名隊員は顔面蒼白。はぁはぁとかなり息苦しそう。女神隊員はそれを見て、
「あの~ 病院に行きますか?」
「あは、大丈夫ですよ」
けど、それは明らかな作り笑い。海老名隊員はぽつりと言いました。
「おかしいなあ。1度よくなったのに、なんでまたぶり返した?・・・」
女神隊員が応えます。
「外にずーっと立ってたからじゃないんですか?」
海老名隊員はさらにそれに応えますが、何を言ってるのか聞き取れないほどの小声。それを見た女神隊員は、
「すぐに寝かせないと」
と思いました。けど、地下の居住区画は今回無事でしたが、途中の地下通路を破壊してしまったので、今は行くことはできません。なんとか寝具を用意しないと・・・
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