神の国を侵略した龍 15

 一方こちらは大病院に入院してる女神隊員です。女神隊員はドクターストップがかかってるとはいえ、元気いっぱい。医師にそれをアピールするため、医師が診断に来る時間に合わせストレッチ体操を始めました。で、医師団がやってきて、やっぱり怒られました。

「困りますねぇ・・・」

 女神隊員はとても小さくなりました。

「あは、すみません・・・」


 渋谷事件から3日目・4日目・5日目・・・ そして7日目。今日も怪獣の女は治療を受けてました。今その治療が終わったところです。女医さんはつぶやきました。

「今日から包帯はいらないな」

 それを聞いて女は、

「出てってもいいのか?」

 と、質問しました。女医さんの応えは、

「おすすめできないな」

 おすすめできない=命の保証はできないが、退院しても構わない。女はそう解釈しました。女は再び女医さんに質問ました。

「もう1度訊かせて欲しい。なんで私を助けた?」

「きまぐれ」

 やっぱり真面目に応えてくれそうにないようです。女は黙ってしまいました。すると今度は女医さんの方から質問してきました。

「じゃ、私から質問してもいいかな? なんで渋谷を壊したんだ?」

「壊したかったから」

 女も真面目に応える気がないようです。女医さんは気分を害したようです。いや、そのふりをしたようです。

「私はあなたの命を助けたんだ。少しは見返りがあってもいいんじゃないのか?」

「わかった」

 女医さんは再び質問です。

「じゃ、もう一度訊くよ。なんで渋谷を壊した?」

「壊したかったから」

 やっぱり応えは同じでした。いや、今回は続きがあるようです。女は視線をずらし、言葉を続けました。

「私はいろんな次元に行って、その次元の町を破壊して、その次元の軍隊を潰すことに興味があった」

「すごい趣味だなあ、おい。今まで負けたことはなかったのか?」

「なかった。今まですべての町を破壊した。もちろん逆襲されたこともあったが、それでも最後は屈服させた。こんなに逆襲されたのは初めてだ」

「そんなに破壊して、何が楽しいんだ? 最終的には何をしたかったんだ?」

「神の国を壊したかった」

「はぁ?」

 女は視線を上の方に向け、

「私が住んでた次元では、生物の頂点は我々ドラゴンだった。人類は数が少なく、力も弱かったから、相手にすらならなかった。けど、人類はあっという間に増えて行き、科学技術も向上させ、いつの間にか我々を脅かす存在になっていた。

 ついに一部地域で我々と人類が衝突し、それがきっかけで全面戦争に突入した。戦況は我々に有利だった。けど、神が人類に協力するとあっという間に形勢が逆転し、最終的に我々のリーダーが敗北を宣言し、我々は片隅に追いやられた。私はそれに納得いかなかった。

 私には時空に穴を開けるという特殊能力があった。私はそれを使って、別の次元に逃走した。

 その次元では人類が平和に暮らしてた。私はその光景が許せなかった。怒りを爆発させた私は、人類の町を破壊して破壊して破壊しまくった。ある程度破壊し尽すと、私は納得し、別の次元に飛んで行き、その次元の町も破壊しまくった。その町を破壊し尽すと、また別の次元に飛んで行き、その町も徹底的に破壊した。

 でも、どんなに破壊しても、私の心は晴れなかった。いつかは元の世界に戻って、あいつらを屈服させたい。あいつらを屈服させたら、今度は神の国に行って、あいつらに協力した神をぶっ潰したい。それが今の私の夢だ」

「ほんとうに神の国なんてあるのか?」

「あるじゃないですか、ここに」

 女医さんは少し笑いました。

「ふふ、そっか」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る