前方の敵後方の敵 18
と、女神隊員は突然ベッドから降り、立ち上がりました。そして巨大な単眼を閉じました。テレポーテーションする気です。
が、ここで自動ドアが開きました。そこには海老名隊員が立ってました。
「女神さん、行ってはいけません!」
「あは、なんのこと?」
女神隊員はすっとぼけました。
「今あなたがしようとしてることを言いましょうか? ペリカン号のところまでテレポーテーションして、巨大化して、ペリカン号を思いっきり殴って壊して、またここにテレポーテーションして帰ってくる」
それはビンゴでした。「さすが千里眼の持ち主」と女神隊員は頭の中で笑いました。が、すぐに真顔になり、
「海老名さん、行かせてください! 私、もう我慢できない!」
と、強く訴えました。
「そんなことしてもバレますよ。地球の観測機器は女神さんの想像をはるかに超えてますから!」
「もしバレたら、巨大化して、できるだけたくさん街を壊して死ぬ! もうその覚悟はできてるから!」
女神隊員は怒鳴りました。それから2人の間に微妙な時間が流れました。その静寂を破ったのは海老名隊員でした。海老名隊員はゆっくりと話し始めました。
「・・・女神さん、隊長はあの3人を殺す気です」
それを聞いて女神隊員は驚きました。
「え?」
と、海老名隊員は突然泣き出してしまいました。
「隊長は自分の命と引き換えに、あの3人を殺す気なんです!」
「ええっ?」
「女神さん、お願い! 隊長を助けて!」
再びサブオペレーションルーム。隊長は静かに座ってます。
隊長は巾着のような小さな布製の小袋を取り出し、それをテーブルの上でひっくり返しました。すると小さな石ころが飛び出し、テーブルの上を転がりました。そう、前章でよからぬネット民を呪い殺したあの小石です。隊長はその小石を握ると、その拳を胸に置きました。そしてそのまま瞑想にふけりました。
ここははるか上空。さらに上空には漆黒の宇宙が見えてます。今ここにペリカン号が飛んでます。
そのコックピット。メインの席は横に2座席で、先ほどの2人の乗員が操縦してます。その1人が発言しました。
「まもなく成層圏を脱出します」
その後方では入谷隊長、宮山隊員、番田隊員が補助席に座ってます。宮山隊員と番田隊員が会話してます。まずは番田隊員の発言から。
「あ~あ、オレたち、クビかなあ・・・」
それに宮山隊員が応えました。
「いや~ まだチャンスはあるさ」
「そりゃ、お前にはまだチャンスがあるだろうよ。なんてったって元総理の孫だし」
「あは、次の仕事が見つかったら、紹介してやるよ」
「そうしてもらえるとうれしいなあ」
2人は笑顔です。と、ここで2人は入谷隊長の異変に気づきました。
「ん、隊長?」
隊長の顔は恐怖に引きつってます。
「ああ・・・」
それを見て宮山隊員が、
「どうしたんですか?」
「お、お前、あれが見えないのか?」
入谷隊長はまっすぐ前を見てそう言いました。宮山隊員もまっすぐ前を見ましたが、何もありません。
「ええ? 別に何もありませんけど?」
しかし、入谷隊長の眼には見えてました。真っ黒いマントを着て、そのマントと一体になったフードを被ってる男。その手には死神の鎌が握られてます。フロントガラスの外側にそいつは立ってるのです。ここは大気圏の外側のはずなのに?・・・
入谷隊長は震えてます。
「な、なんなんだ、こいつは?」
今度は番田隊員が話しかけました。
「隊長、何もいませんって!」
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