前方の敵後方の敵 14

 宮山隊員は笑いながら、

「あはは、お前ら、オレを誰だと思ってるんだ? 元総理宮山総一郎の孫、宮山駿介だぞ!」

 それを聞いて倉見隊員が思わず苦笑します。

「お前さぁ、カメラが廻ってる前でよくそんな恥ずかしい発言ができるもんだなあ、ええ!?」

 香川隊長が入谷隊長に質問です。

「なんでわれわれを攻撃した?」

「お前らを攻撃したんじゃない。あの女を攻撃したんだ!」

「女神隊員を?」

「ああ。4か月前オレたちはやつが乗ってきた難民船を攻撃した。そうしたらやり過ぎだとたくさんの非難がきた。インターネットを通じてたくさんの罵詈雑言がきたんだ!」

 それを聞いて橋本隊員が激怒。

「当たり前だろ。お前ら、むこの難民を5000人も殺したんだぞ!」

 入谷隊長が反論。

「何が当たり前だ! 我々は我々の職務を全うしただけだ!

 1か月前やつらの遺体写真が流出した。そうしたらその罵詈雑言は止まった。逆によくやったというメールまでいただいたよ。でも、それは持って3日。4日目あたりからまた罵詈雑言が復活した。いや、逆に激しくなった。中にはオレたちの写真を一つ眼にしたコラ写真や、黒焦げ死体にしたコラ写真まであったよ。あれは参ったな・・・

 このままでは我々の業務に支障が出ると思い、そこで対策会議を開いた。そこで出た答えは2つだった。1つは、あの事件の唯一の生き残りのあの女に謝罪して、その映像を公開する」

 香川隊長はちょっと納得したようです。

「ふ~ん、なるほど・・・

 で、もう1つは?」

 入谷隊長は少し考え、ぽつりと言いました。

「ビデオ止めろ」

 香川隊長もちょっと考え、倉見隊員と寒川隊員を見ました。

「おい、カメラ、止めてやれ」

「はい!」

 2人はそれぞれ三脚に取り付けられたムービーカメラを止めました。香川隊長はそれを確認して、入谷隊長を見ました。

「おい、ビデオ止めたぞ」

 しかし、入谷隊長は無言です。香川隊長は大声で促しました。

「おい!」

 入谷隊長は苦虫を潰したような顔を見せ、そしておもむろにしゃべり始めました。

「もう1つの答えは、あの女を・・・ 女神隊員を殺すことだった」

 倉見隊員と寒川隊員はその言葉を聞いて唖然としました。橋本隊員は苦笑しました。香川隊長は淡々(たんたん)と質問を続けました。

「なんでそんなことを?」

「地上ではあの女の人気はうなぎ昇りだった。それに反比例する形でうちに来る罵詈雑言が増えていった。なら、あの女を殺せば罵詈雑言は止まるんじゃないか? そういう結論に達したんだ」

「ふつーの思考の持ち主だったら、そんな結論にはとうてい達しないな」

 その香川隊長の発言に宮山隊員が応えました。

「それだけオレたちは追い込まれてたんだ!」

 入谷隊長は言葉を続けました。

「そんなとき、昨日だったな。認識ステルス機能を作動させた未確認飛行物体が大気圏に突入した。我々は慌ててスペースストーク号であとを追い駆けた。けど・・・ 未確認飛行物体を追い駆けてるうち、オレたち3人はこんな会話を始めたんだ。

 地上ではすでにテレストリアルガード本隊が対応しているはず。なら、そこにあの女がいるんじゃないか? なら、あの女を殺す絶好のチャンスになるんじゃないのか? J1では謝罪派が過半数だったが、我々3人は暗殺派だったんだ・・・」

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