前方の敵後方の敵 3

 が、もう1機のストーク号が放ったビームがヒットしました。空中の何もないところで火花が散ったのです。隊長は思わず感嘆の声を挙げました。

「よーし、ナイス!」

 その銃爪トリガーを握っていたのは橋本隊員でした。

「ふっ、自動照準器のおかげですよ」

 しかし、寒川隊員がレーダースコープを見て、否定的な発言をしました。

「隊長、目標はまだ飛行してます!」

 隊長は悔しがってます。

「ちっ、致命傷じゃなかったか・・・ よーし、追いかけるぞ!」

 寒川隊員と橋本隊員がそれに応えました。

「了解!」


 2機のストーク号が見えない敵を追って、降下していきます。ストーク1号のコックピットの隊長がぽつり。

「くそーっ、角度がよくないなあ。この角度でビーム砲を撃ったら、地上に被害が出ちまう・・・」

 寒川隊員が質問するように、

「しかし、なんなんでしょうねぇ、やつら?・・・ ユミル星人は認識ステルス機能は持ってないはずだし・・・ もしや、ヴィーヴル?」

 それに対する隊長の応え。

「うちらの窮地を救ってくれた軍隊をあまり悪く言いたくはないが・・・ この技術、宇宙ではどれくらい広がってるんだ?」

 と、ここでコンソールの無線が鳴りました。上溝隊員から連絡です。

「隊長、ストーク号の後ろに国籍不明機が1機います」

 隊長はヘルメットに備え付けられたマイクに、

「何?」

 と返事。上溝隊員の音声が続きます。

「どうやら大気圏外から未確認飛行物体を追い駆けてきたようです。敵味方識別装置は味方を示してますが、国籍は不明です」

 寒川隊員が隊長に質問しました。

「どこの飛行物体なんでしょうねぇ?・・・」

「敵味方識別機能がついてるてことは、地球上の飛行物体だな・・・」

 隊長はそれ以上は応えませんでした。


 一方ここは見えない宇宙船のコックピット。円卓のような操縦席に4人が十字に座ってます。4人の前にはホログラムのモニターとディスクトップ型パソコンに似たコンソールが設置されてます。どこから来た宇宙人なのか不明ですが、地球人に姿形が酷似してます。全身黒っぽい金属色の服を着ています。とりあえず4人をA・B・C・Dとしましょう。まずBがAに話かけました。

「ダメです。ついてきます!」

「くっそーっ、やつら、この船の認識ステルス機能を見破る技術を持ってるのか?」

 今度はCの発言。

「まもなく地上です」

 4人の頭上には巨大なスクリーンが設置されていて、そこにだだっ広い草原が映りました。草原の中には道路が見えます。畑も牧草地も見え、家や小屋が点々と建ってます。典型的な田園風景。

 同じ映像がホログラムのモニターにも映ってます。それを見てAが焦ります。

「くそーっ、山か谷はないのか?」

 ここでDが立ち上がりました。

「自分が行きます!」

「いいのか?」

「はい!」

 Aはちょっと考え、それから口を開きました。

「じゃ、頼む」


 見えない宇宙船を追う2機のストーク号。そのストーク1号のコックピットです。まず寒川隊員の発言から。

「まもなく地上です!」

 隊長はレーダースコープを見てます。今宇宙船の影から何か別の影が飛び出ました。

「ん? 何か飛び出したぞ?」

 隊長はヘルメットの無線機に話しかけました。

「橋本、宇宙船から何か飛び出した。脱出用の船らしい。お前たちは元の宇宙船を追ってくれ。オレたちは飛び出した宇宙船を追う!」

 無線機の向こうから応答。

「了解!」

 レーダースコープを見ると、飛び出した宇宙船は地上に降りたようです。隊長はそれを見て、

「脱出用の宇宙船が地上に着いたな」

 それを聞いて後部補助席の女神隊員は疑問を持ちました。こんなにハードに着陸する脱出用宇宙船てあるの?

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