宇宙人受難之碑 19

 テレストリアルガード基地サブオペレーションルーム。隊長が小石を巾着のような袋に戻しました。そしてこうつぶやきました。

「ふっ、ちょろいもんだ」

 と、隊長の背後に赤い何かがいます。隊長ははっとして振り返りました。そこには赤いマントをかぶった7歳くらいの女の子が立ってました。頭にはマントと一体になったフードがあります。そのフードを目深にかぶってるせいか、顔は見えません。隊長は焦りました。

「あ、赤い女の子?・・・」

「あなたは殺し過ぎました」

「な、なんで? オレはまだ50人も殺してねーだろ!」

 女の子は弓に矢をつがい、構えました。

「ああ・・・」

 女の子は弓矢を構えたまま、ゆっくりとゆっくりと歩いてきます。隊長は思わず叫んでしまいました。

「やめろーっ!」

 その瞬間、女の子が矢を放ちました。その矢が隊長の耳をかすめ、すぐ後ろの壁に刺さりました。材質的には矢が刺さるような壁ではないのですが、なぜかぐさっと刺さったのです。さすがの隊長も、恐怖で顔がひきつってます。女の子は赤いフードに手を伸ばし、そのフードを取りました。なんとその女の子は単眼のドクロでした。

「ふふふ、次ははずさないよ」

 というと、女の子の姿は微粒子のようになり、細かく散って消えてしまいました。と同時に、壁に刺さった矢も微粒子のようになり、消滅しました。隊長はその場で腰砕けになってしまいました。

「ああ・・・」


 それから1週間後、長い長いトンネルの中を1台のセダンタイプのクルマが走ってます。テレストリアルガードのカラーリングが施されてるところを見ると、テレストリアルガード所有のクルマのようです。

 今セダンタイプのクルマがやっとトンネルを抜けました。ここは山間部を貫く高速道路でした。

 その車内です。運転してるのは寒川隊員、助手席には香川隊長が座ってます。この2人はテレストリアルガードの隊員服を着てます。

 後部座席には女神隊員と先日女神隊員に痛い目に遭わされた男がいます。男の顔を見ると、けがはほぼ全快してるようです。男は物珍しそうに流れる光景を見ています。声が若干漏れてきました。

「あ、ああ~」

 女神隊員は白いワンピース、白い巨大な帽子をかぶってます。前髪のウィッグも見えます。流れる光景を楽しそうに見ている男を見て、女神隊員はちょっと笑ってるようです。

 運転してる寒川隊員は横目で隊長を見ました。

「隊長、ここんとこずーっと顔色悪いですよ。また糖尿病が悪化したんじゃないですか?」

 隊長はぽつりと応えました。

「うるせ」


 セダンが高速を降りました。そして一般国道を走り、狭い道を走り、急な坂道を登り、ある門の手前で止まりました。じょんのび家族の門です。後部座席のドアが開き、男がセダンを降りました。園内で遊んでいた子どもたちがそれに気づき、わっと集まってきました。

「あ、お兄ちゃんだ!」

「お兄ちゃん!」

 男はあっという間に子どもたちに取り囲まれてしまいました。が、たまたま通りかかった人が男を見て、びびりました。

「お、おい、エイリアンじゃねーか!」

 寒川隊員はその人に、

「いや、彼は本物ですよ」

 隊長がさらに続けました。

「実は1ケ月前悪意のある宇宙人と入れ替わってたんですよ。我々テレストリアルガードはようやく本人を見つけ出し、解放することに成功したんです」

 通行人は関心しました。

「ああ、そうだったんだ」

 テレストリアルガードは相変わらず口は一流のようです。

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