宇宙人受難之碑 18

 片側が深い崖の山道です。1.5ボックス車が逃げるように走ってます。その車内です。ドライバーがうだうだと文句を言ってます。

「くそーっ、テレストリアルガードてオレたち地球人を守ってくれる組織だろ? なんでそんな組織に殺されなくっちゃいけないんだよ?」

 助手席に座ってる男は、右手に持ってるムービーカメラを見ました。さっき録画してたカメラです。

「ともかくこの映像をようつべに上げるよ。テレストリアルガードの凶行を日本人全員に見てもらうんだ!」

 と、このクルマの行く先に、路上に佇む人影が見えてきました。黒装束で黒いフードをかぶった男です。手には死神のような鎌が見えます。どうやらあのブサメンを殺した怪物のようです。

「な、なんだよ、ありゃ?」

 黒装束の男がジャンプして、クルマに向かって飛んできました。アスファルトより少し高いところを飛んでるのです。それを見てこのクルマを運転している男が驚きました。

「ええ?」

 黒装束の男のフードが風圧で飛びました。その瞬間一つ眼のドクロの顔が思いっきりあらわになりました。それを見て車内にいる4人全員が恐怖に包まれました。

「バ、バケモノだーっ!」

 怪物が鎌を振り上げました。そして鎌をスイング。鎌はフロントガラスやハンドルをスルーして、運転している男を袈裟斬り。男の身体に衝撃が走ります。

「うぐっ!」

 クルマはコントロールを失い、崖の方へ。助手席の男と後部座席に座ってる2人が悲鳴をあげました。

「うぎゃーっ!」

 クルマがガードロープを突き破り、そのまま落下。途中崖から突き出てる岩にバウンドし、さらに下の川へ。そして川のほとりの大きな岩石に激突し、大爆発しました。

 1.5ボックス車が突き破ったガードロープの手前で軽自動車が急停車。運転席から往路も運転していた男が、助手席からは先ほど腰砕けになってた女の子が降りました。運転していた男は崖下を見て嘆きました。

「な、なんてことを・・・」

 と、崖下から先ほどの黒装束の男が飛び上がってきました。男はフードをかぶってません。単眼ドクロの顔が丸見えです。女の子の顔は一瞬にして恐怖にひきつりました。

「な、何よ、これ?」

 黒装束の怪物は思いっきり鎌を振り上げました。どうやら運転してきた男を狙ってるようです。男はそれに気づくと

「ええ?」

 と言って、慌てて振り返りました。走って逃げる気です。

「や、やめろーっ!」

 が、男が走り出す前に鎌が振り下ろされました。

「うぐっ!」

 男は強い衝撃を感じ、そしてゆっくり倒れました。外傷はまったくありませんが、死んでしまったようです。

 怪物は今度は女の子を見ました。女の子の顔は恐怖にひきつってます。

「あ、ああ・・・」

 女の子は逃げようとしましたが、ヘビににらまれたカエルか、身動きがまったく取れなくなってしまいました。女の子はとっさに両耳をふさぎ、小さくうずくまって、

「やめて! やめて! やめて! やめてーっ!」

 と、ただひたすら叫び続けました。

 怪物は鎌を女の子に振り下ろす体勢でしたが、その動作を止めました。怪物はちょっと笑ったようです。そして黒いフードをかぶりました。すると怪物の身体は微粒子のようになり、細かく散って消えてしまいました。

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