宇宙人受難之碑 13
無菌室の中、女神隊員はようやく頭を上げました。隊長はその単眼を見て、
「これじゃ、どっちが凶悪な宇宙人なのか、わからんな」
橋本隊員の質問です。
「あの男、どうします?」
「とりあえずうちの隊員にするか。その状態でじょんのび家族に出向するという形に・・・」
「そんなことできるんですか?」
「大丈夫、テレストリアルガードはなんでもありだ」
「いやぁ、それもそうなんですが・・・ 彼、じょんのび家族に帰れるんですか? もう宇宙人てことがバレちゃってますよ」
「あは、そっか・・・ めんどくさいなあ、日本て・・・」
なお、隊長は女神隊員に7日間の謹慎を命じました。具体的には7日間サブオペレーションルーム立ち入り禁止です。ただし、この処分には別の意味もあるようです。
翌朝です。隊長がサブオペレーションルームで固定電話に出てます。
「あ、ああ、あ~そうか・・・ わかったよ、ありがとう」
隊長は電話を切りました。寒川隊員がマグカップに入ったコーヒーを持ってきました。
「はい、コーヒーです」
隊長はその寒川隊員を見て、
「あいつ、釈放だってよ」
「あいつって、宇宙人の写真を流出させたやつですか?」
「ああ、例の写真は誰にでもふつーに見られる状態になってたんだそうだ。まあ、早い話、自衛隊のミスだったらしい」
「なんか納得いきませんねぇ・・・」
「まぁ、しょうがないだろ」
そう言っておきながら、隊長の顔は妙に不自然、なぜか笑顔なのです。何か企みがあるようです。
朝の陽光の中、1台のパトカーが2階建て木造アパートの前に停まりました。その後部座席が開き、昨日逮捕された例のブサメンが降りてきました。
「けっ!」
パトカーが走り去りました。ブサメンはそのパトカーに罵詈雑言を浴びせました。
「全部ネットに書き込んでやるからな、覚えてろよ! バーカ!」
ブサメンは振り返りアパートの外部階段の手すりに手を掛けました。と、その真後ろに男が立ってます。黒いフードを被った黒装束の男です。ブサメンはそれに気づいたらしく、さっと振り返りました。
「ん?」
が、誰もいません。
「あれ、誰かいたような?・・・」
ブサメンは頭に?を浮かべますが、すぐに何もなかったように階段を昇って行きました。
ここはブサメンのアパートの部屋です。相変わらず汚い部屋。こんなに不衛生な部屋はほかにあるんかいな、てくらいの汚い部屋です。雨戸は閉めてなかったのか、陽光が部屋の中に差し込んでます。今ブサメンがドアを開け、部屋に入ってきました。ブサメンはパソコンの前に座り、こうつぶやきました。
「よーし、全部ネットに書いてやるからな!」
ブサメンはパソコンのメインのスイッチを入れ、ディスプレイを見ました。当然画面は真っ黒。ブサメンの顔が反射してます。が、よーく見ると、そのブサメンの真後ろに黒いフードを被った男の姿があります。男は死神が持ってるような鎌を持ってます。それに気づいたブサメンはびっくり。そしてゆっくりゆっくり振り向きました。が、誰もいません。
「お、おかしいなあ・・・」
パソコンが立ち上がりました。
「よーし、書くぞ! へへ、警察に復讐してやる!」
が、またもやブサメンの真後ろに鎌を持った黒装束の男が立ってます。ブサメンは今度は高速で振り返りました。が、やはり誰もいません。
「おかしい。誰かいる。絶対誰かいる・・・」
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