宇宙人受難之碑 11
橋本隊員・倉見隊員・寒川隊員も男を追おうと木戸に向かいました。
「待てーっ!」
けど、その木戸の前に2人の少年が立ちはだかりました。2人とも車いすです。
「おい、どけっ!」
橋本隊員は思わず大きな声で叫びました。車いすの少年が言い返しました。
「嫌だ!」
「あの人は何も悪いことしてないよ! なんで捕まえようとするんだよ!」
橋本隊員は困ってしまいました。
男が山道を走って逃げます。その真後ろを女神隊員が追いかけます。女神隊員が叫びます。
「待てーっ!」
けど、男は止まりません。逃げ続けます。
「くっ!・・・」
女神隊員は右手を水平に挙げ、手で拳銃の形を作りました。そして指先から光弾を発射。その光弾が男の左脚をかすめました。
「うぐぁっ!」
男はバランスを崩し、道を外れ、左側の斜面を転げ落ちていきます。
「うわーっ!」
男は思わず巨大化しました。服はビリビリに砕け、素っ裸になって立ち上がりました。施設の小さな子どもたちはそれを見てびっくりしました。
「お、お兄ちゃん?」
女神隊員も巨大化。と同時に、男の顔面に蹴りを入れました。男はもんどり打って転倒。女神隊員はその男に馬乗りになりました。そして顔面にパンチ。1発2発。
「ヘルメットレディ、やめてよーっ!」
「お兄ちゃんは何も悪くないんだよーっ!」
子どもたちの悲痛な叫びが響いてきます。でも、女神隊員の耳に届かないのか、なおも殴り続けます。3発4発5発・・・
「ヘルメットレディなんか死んじまえーっ!」
「お兄ちゃん、そいつを殺しちゃえーっ!」
子どもたちの声が変わりました。思いっきり泣き声です。女神隊員はそれを不快に思ったのか、立ち上がりました。そして男の身体を思いっきり蹴飛ばしました。男の身体は転がり、そのまま急斜面を滑り落ちて行きました。
急斜面が終わり、ほぼ平らになったところ。雑木林が住宅地に変化するところです。滑り落ちてきた男の身体が住宅地手前でようやく止まりました。男は完全にグロッキー状態です。右眼を中心に顔がひどく腫れあがってます。女神隊員がその男の前に立ちはだかりました。
女神隊員は右手を高く挙げました。するとその手に剣が現れました。女神隊員は両手で剣を握り、振り上げました。男の顔面に剣を突き立てる気です。
「いいぞ、ヘルメットレディ!」
「やれーっ! やっちまえーっ!」
「エイリアンなんか、ぶち殺しちまえーっ!」
いつのまにか集まってきた人々が大声で叫んでます。それはさっきの子どもたちとは真逆な声でした。その声が気になってしまい、女神隊員は手を止めました。
彼女は何か疑問を持ったようです。今私がやってる行為は、テレストリアルガードの隊員として正しい行為なのか?
「エイリアンなんか斬り刻んじまえよーっ!」
その憎悪に満ちた言葉を聞いて、女神隊員は振り向き、その言葉を発した男をにらみつけました。ま、女神隊員はフルフェイスのヘルメットを被ってます。そのせいで外から眼がみえません。にらみつけたところで、あまり意味がないのですが。
女神隊員は考えました。女神隊員の今日の目的は、ヘルメットを脱いで自分の顔をさらすこと。自分の単眼をさらして、5,000の同胞の名誉を回復させることでした。
でも、こんなに憎悪に満ちたやつらに自分の素顔を見せたら、今度は自分が憎悪の対象になってしまいます。自分もエイリアン。素顔を晒したらどんなひどい罵声を浴びせられることか・・・
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