宇宙人受難之碑 8

 女神隊員は自室で小さくなってました。壁を背に体育座りです。両ひざの間から巨大な一つ眼が見えてます。前髪のウィッグは珍しくつけてないようです。女神隊員は思い出してました。

 彼女の母星は凶悪な宇宙人の侵略を受けるとの予言を受け、たくさんの脱出用の宇宙船を造りました。女神隊員はそのうちの1つに乗り込み、5000もの同胞とともに母星を退避しました。5000の同胞は仮死状態でカプセルに入れられましたが、彼女は数百万人に1人の異能力者。いわゆる女神です。宇宙船の操縦を任されました。しかし、地球の側を通ったとき、テレストリアルガードスペースステーションJ1から攻撃を受け、この地球に墜落。そのとき彼女は5000の命とともに殉死する覚悟を決めました。

 けど、地球に激突した瞬間、彼女の本能が働いてしまい、ショートテレポーテーションとともに巨大化して難を逃れてしまいました。さらに地球上のテレストリアルガードの猛攻撃を受け、拉致られてしまい、いつのまにかその組織の一員になってました。

 なんで自分はテレストリアルガードの一員になってる? 意志が弱いから? 宇宙船が地球に激突したとき、そのまま死んでしまえばよかったのに・・・ テレストリアルガードの基地に連行されたとき、巨大化して再び暴れればよかったのに・・・ たとえまたストーク号やヘロン号に攻撃され、身体がズタボロになっても、それはそれで本望だったはず・・・

 私は何もできなかった。私は私の命がかわいかったのだ。5000もの同胞の命よりたった1個の自分の命を大事にしてしまったのだ。私はなんて情けないんだ・・・

 せめてあの日散ってしまった5000の命を復権させたい。彼らは死んでるのに、地球人に嘲笑されてる。単眼が気持ち悪いという理由だけで差別されてる・・・ なら、私がこの顔を人前にさらせば・・・

 私はヘルメットレディという名で、スーパーヒロインとしてこの星に迎えられた。私がこの顔をさらせば、みんな、少しはわかってくれるはず。そうだ、思い切って顔をさらそう!

 じゃ、どこで顔をさらす? 今すぐ外に駆けて行って、巨大化する? いや、それじゃだめ。もっともっと印象的な場面で顔をさらさないと! それなら・・・


 女神隊員は立ち上がり、廊下に飛び出ました。そして廊下を駆け抜け、サブオペレーションルームに入りした。中では海老名隊員がテーブルに座ってインターネットをやってました。他の隊員の姿は見当たりません。

 海老名隊員は誰が入ってきたのか興味がないようです。いや、気づいてないのかも。が、

「海老名さん!」

 女神隊員のその大き目な声で、海老名隊員はマウスを握る手を止めました。女神隊員は言葉を続けました。

「海老名さん、巨大化できる宇宙人を探してください!」

 海老名隊員はここでやっと顔を上げました。すると女神隊員は珍しく単眼をさらしてました。いつもはウィッグに隠れてるヘッドセット(自動翻訳機)も剥き出しです。海老名隊員はそれを見て思わず苦笑してしまいました。その状態での発言です。

「ム、ムリですよ、そんな・・・」

「海老名さんは遠くで起きてることや、未来で起きることが見えるんですよね。なら、巨大化できる宇宙人が今どこにいるのか、わかりますよね!」

 海老名隊員はそれを聞いて、「えっ?」という顔を見せました。そう、海老名隊員は千里眼の持ち主なのです。これを知ってる人は隊長だけでした。でも、女神隊員はいつしか気づいてしまったようです。ま、ほかの4人のテレストリアルガードの隊員も、なんとなくそれに気づいてるようですが。

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