第50話 紅


 私のお父様、清白すずしろ 徳光とくみつは清白財閥の総帥。

 簡単に言ってしまえば、日本屈指のお金持ちでデスゲームに魅入られた男となります。

 コレクターを名乗れるほどデスゲームの動画を収取しており、観戦型のデスゲームに都合が合えば自家用ジェットで迎う。

 より良いのデスゲームを生み出す為に運営会社のスポンサーとなって多額の投資。

 業界を盛り上げる為に有志の方々と新規層獲得の活動までしています。

 裏の事業とはいったい?と聞きたくなりますが、年々デスゲームの需要は高まっていますので、活動は成功しているのでしょう。


 そんなお父様ですが、どれだけお金をつぎ込もうと出来ない事が一つあります。

 それはご自身がデスゲームに参戦しクリアする事です。


 20代前半、足に後遺症が残るほどの事故に遭い、日常生活は問題ありませんが激しい運動は出来ない身体なのです。

 もちろんヤラセのデスゲームならいくらでもクリア出来ますが、お父様はデスゲームでヤラセなど言語道断という方なので参加しません。

 障害は足だけなので頭脳系のデスゲームならヤラセなしにクリアすることも出来なくはないと思いますが、本人は後遺症さえなければ自分は万能タイプのデスゲーマーに成れたと頑なに言い張っており、頭脳系のゲームにも参加しません。

 

 他の人なら「本当は死ぬのが怖いだけだろ」で終る話なのですが、お父様は熱意が違いました。

 莫大な資金を投じてでも自身が優秀なデスゲーマーになれたことを証明しようと考えたのです。


 最初は自分のクローンを作ることを考えたそうですが、二十数年前なので技術が低く、完成までの時間や総予算、その他様々な問題があった為早期に諦めたようです。


 次に、クローンが駄目ならせめて自分の子供を、と考えたのです。

 

 当然ですが、清白家の跡継ぎをデスゲームに参加させる訳にはいきませんし、させるつもりもありませんでした。


 お父様の計画は、

 人工子宮の開発に投資し、自分の精子と金で買った優秀な女性の卵子で、理想の子供を創造うみ出すというものでした。


 試験段階で何千何万の子供が創造うみ出されては死んでいったことでしよう。

 そして実用段階で健康的な複数の子供が創造うみ出されたそうです。


 その中の一人が私、清白すずしろ 美優みゆことくれないです。 


 ただし、私がこの真実を知ったのは15歳の初デスゲームです。




 子供の頃はそんなことは知らず割と普通に過ごしていました、清白家の分家という設定で。

 養父母を本当のお父さんお母さんだと思っていましたし、公立の小学校に通っていました。

 普通と違う点を言えば、

 習い事が数が桁違いに多かったこと。公立に通う子供では抜き出た英才教育だったでしょう。

 年に二度、本家に呼ばれ総帥様に習い事で身に付け技術を披露する日があったこと。

 その一週間前ぐらいからお父さんとお母さんは、「総帥様に喜んでいただけるよう頑張るんだぞ美優」「美優は天才だから絶対喜んで頂けるわ」という様な事を繰り返してました。

 私が自分で天才と言うのは、お父さんお母さんに褒めて伸ばす教育を受けてたのが原因でしょう。


 小学校での話も少しすると。

 勉強・運動共に常に学年一位。

 友達と呼べる相手はいませんでしたが、読書の方が楽しかったので苦に思ったことはありませんでした。

 思い出深いエピソードは、

 クラスのワルガキ男子が私にイタズラしてきたのでボッコしたら、他のクラスの男子が「女の癖に生意気だ!」とちょっかい出して来たのでボッコにして。

 次々学校のワルガキをボッコにしてたら裏ガキ大将になってたことですかね。

 いやぁ~、私もあの頃は子供でした。



 中学は私立の学校に入学しました。

 授業も生徒もレベルが上がると聞いていたので期待していたのですが、

 大したことはありませんでした、勉強も運動も私が学年トップ。さすがに私が常に全てで一位だったわけではありませんが、総合評価では常に一位です。

 学業を頑張るのはもちろんとして、お父さんお母さんから「中学ではクラスメイトと友好的な人間関係を築く努力するように」と言われました。

 それまでは友達がのではなくだけなので、その気になれば友達を作るぐらい余裕だと思っていました。


 しかし、予想外に難航しました。


 一番の問題点は私が男子生徒にモテたことです。最初は本当に自覚がなかったのですよ、小学校で裏ガキ大将だったので。

 でも傍からは成績優秀・スポーツ万能・容姿端麗、さらに私立の生徒なら清白が名家と知っています。

 そんな私が誰とでも分け隔てなく仲良くしていたら、男子生徒からイケそうな高嶺の花に思われ、女子生徒からの嫉妬が集中して揉め事になったりしたのです。

 正直面倒くさいので、突っかかってくる女子を片っ端からボッコにして黙らせようかと何度も思いましたが、それは望まれている友好的な人間関係とは違うので止めました。


 イメージ修正の為に私はクラス委員長になりました。

 勉強が苦手な生徒の為にテスト前に対策勉強を行い、運動が苦手な生徒の為に体育祭前に練習に付き合い、教室で五月蠅くする生徒にはっきり注意する。

 言い寄ってくる男子には「家が厳しいので恋愛はお断りします」というスタンスを貫きました。

 その上で、ただの良い子ちゃんではなく時には教師に反発もしました。

 反発と言っても不良生徒的なおこないではありませんよ優等生徒的なおこないいです。

 例えば、髪型や服装に関する古臭い校則に抗議したり、イジメをする表向き優等生を粛清したり、クズ教師を懲戒免職処分に追い込んだり……、などなど。


 努力の甲斐あり私は、真面目で口うるさいけど頼りになるクラスの纏め役ポジションに就きました。

 恋愛面では男子に一縷の望みもないと思わせたので、女子に嫉妬されることは少なくなりました。零にならないのが難しいところですね…。

 総合的にはプラスの好感度なので、クラスメイトと友好的な人間関係と言えるでしょう。


 友達と呼べる相手も2人いました。

 一人は相田さん。

 三つ編み眼鏡でポッチャリ女子、運動が苦手で体育祭の練習に付き合ったのがきっかけで知合い、読書が趣味という共通点があったので仲良くなりました。

 もう一人は桜井さん。

 サイドテールでギャル系女子、勉強が苦手でテスト勉強に付き合ったのがきっかけで知合い、料理に興味があるという共通点で仲良くなりました。

 ちぐはぐな三人組だったのですが、たまの休日に一緒に遊びに出かけた時は凄く楽しいかったことを覚えています。

 中三の修学旅行でも同じ班になりました。

 らしくもなく、あの時は修学旅行が楽しみで浮かれていたと思います。


 そして、

 修学旅行の出発後、 

 私達のクラスは全員拉致監禁され、デスゲームに強制参加させられることになったのです。



 私は友達二人を自らの手で殺しました。

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