第657話 ひのとり57列車
近鉄四日市駅06時00分発の近鉄名古屋行き急行。急行としては始発電車に乗っている俺と海織は、その後順調に電車に揺られて移動。移動。何故か俺の実家にとは真逆に移動中――って。なんか途中で海織がこちらへともたれてきているな。と思ったら――桑名駅を出たあたりから俺にもたれつつスヤスヤしていましたよ。うん。立ったまま寝るのか。だったが―—しばらく海織はそんな感じ。まあ起きていたのかもしれないが。静かだしいいか。ということで俺が支えていると海織は、名古屋駅の手前。
海織が起きて少し。俺と海織が乗った電車は、06時34分。近鉄名古屋駅に到着しまして――すごい数の人が一気にホームへと吐き出されました。いやマジですごい人だった。前の方はかなりヤバそうだが――最後尾もなかなかだった。
「楓君ちょっと時間あるから何か買って来ようよ」
そんな人混みの中。俺と海織ははぐれないように手を繋ぎ――って自然とつないでましたね。慣れというのかなんとやら。まあいいか。迷子になると厄介ですからね。って、海織なんて言った?
「えっ?って――今俺はどこに連れて行かれているのでしょうか――そこの方が気になる」
「だから。実家だよ?楓君の」
「海織の――じゃなくてだよね?」
「楓君の実家だよ?」
うん。今の雰囲気。ここで名鉄へ――だったら完全に海織の実家に――だと思ったが。どうやら違うらしい。もう完全におかしいですね。再再度くらいになるかもしれないが。俺の実家真逆。忘れている方もいるかもしれないので余計な情報を追加しておくと。伊勢志摩方面です。現状はどんどん遠くへと来ていますね。
その後俺は結局海織に振り回されまして――引っ張ら続けました。ちょっと軽食と飲み物をゲット。買い物が終了すると何故かまた俺達は近鉄名古屋駅に戻ってきていたのだった。現在の時刻は06時51分。うん。何をしてるのか全く分かっていない俺です。すると海織が駅構内の待合室へと俺を引っ張って行き――。
「はい。楓君。今日の特急券」
「うん?」
待合室に入り。荷物を一度置いた海織が自分のカバンを漁って――俺に2枚の特急券を渡してきた。2枚である。同じもので、俺と海織の分。という事ではないらしい。だって海織の手元にも2枚の特急券があるから。
「これは――うん?」
海織から渡された特急券。そこには近鉄名古屋駅07時00発大阪難波行き特急ひのとり。プレミアム車両8号車1Bの文字が書かれている。
「うん?」
まだ状況がわかっていない俺。
「楓君。うん?しか言ってないよ?」
「いやいや、これ――って待って。なんかおかしいな」
俺は海織に渡されたもう一枚の特急券を確認すると。もう1枚の特急券は、大阪難波駅10時40分発。観光特急しまかぜ賢島行き1号車9Bの文字が書かれている。ちょっと整理が必要ですね。うん?俺はしばし特急券を見ながら考える。
1枚目の特急券は名古屋から大阪難波まで。2枚目は大阪難波から賢島。このお方なんか変なルート設定で俺の実家を目指しているらしい――じゃなくて。まあそれもなのだが。特急の種類だ。
「海織。これ――どういうこと?」
俺は全く知らなかったため。海織に確認する。
「いやー、楓君に怒られないようにご機嫌取りかな?はい。06時53分」
すると不思議なことを言う海織だった。
「はい?って、なんで時間確認?」
「いいからいいから、とりあえず。あとで協力してくれた沙夜ちゃんに感謝しておいてね?頑張ってもらったんだから」
「斎宮さん?」
唐突に出てくる斎宮さん。このお方何を言っているのだろうか――と俺が思っていると。
「いや、沙夜ちゃんがね。しまかぜの方は特急券取ってくれたんだから」
「何が起こってる――」
「だから。楓君がずっと乗りたい――って言っていた。ひのとりとしまかぜの先頭車両。先頭座席の特急券だよ。まだわからないの?」
海織に言われて再度特急券を確認する。うん。ひのとりの8号車ということは――この名古屋駅からの場合だと。大阪向きの場合先頭車両だ。そして大阪難波駅から賢島の際は1号車が先頭になるので――うん。うん。うん。ちょっとフリーズ中。のち――。
「えー、すごっ!?」
「あっ。やっと理解した」
俺の隣で海織が笑っていたのだった。
「えっ?マジで?よく取ったね」
「何回も挑戦したんだよ?先頭車両で座席指定しなかったら取れそうだったけど。一番前は競争率どっちも高くて。沙夜ちゃんも途中でキーってなってたよ」
「……めっちゃチャレンジしてくれていたのか――」
「だから。ちゃんとお礼とお土産たくさん買ってあげてね?」
「あ、うん。了解」
その後俺がマジか。と再度2枚の特急券を見ていると。俺と海織が乗車予定のひのとりが駅へと入ってくる放送があったので待合室から俺達は出てホームを歩き出した。
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