第656話 不死鳥と海の風

時は進み――。


とある日の朝の事。正確には早朝の事ですね。超眠いっす。昨日の夜早く寝れたわけではないので超眠いです。まだ寝ていたかったです。という時間である。


「いやー、よかったね。楓君ちゃんと卒業論文完成して、最後苦戦していたみたいだけど」


すると早朝でもいつも通り完璧の海織が話しかけてくる。今日はお出かけバージョン。普段もおしゃれさんですが。今日はいつも以上におしゃれをしていますね。うん。俺は通常モードです。なんかすみませんだが――行き先がね。俺的にはおしゃれをするところではないのでね。


「ホントだよ。最後まで大変だったー。何度最後のところ書き直したか。藤井寺先生絶対楽しんでるでしょ。レベルで赤ペン書きまくって来るし」


現在俺と海織は早朝の伊勢川島駅で電車を待っているところ。


「もし出来なかったらこのお出かけは七菜ちゃんと。になっていたからね。ちなみに七菜ちゃんからの伝言だけど――『何で加茂先輩卒業論文できちゃうんですかー。加茂先輩なら来年居てくれてもOKです』だって。ホント仲良しだねー」


するとなかなかうまい七菜の真似をしながら海織がそんなことを言ってきた。うん。声そっくりだったよ。


「——ってか、おかしい。うん。七菜は俺を卒業させないつもりなのか」

「あっ。かもしれないね。七菜ちゃん楓君の事好きだからね。一緒に居てほしいのかもよ?」

「——いやいや、それはないでしょ。勝手なことを言わない」


うん。今のところ俺は数か月後ちゃんと卒業し社会人ですからね。うん。単位はOKのはずです。必須科目もクリアしています。誰かさん。大騒ぎしていた柊は――知らないが。うん。最近超必死だったのは知っているが――まあ今は気にすることではないな。などと俺が思っていると。


「いやいや、七菜ちゃん言ってたよ?『加茂先輩とっても便利です』って」

「——」


海織がそんなことを言ってきたのだが……俺、七菜に便利屋にやはりみられていたのか。って使いやすい先輩だったのね。って――七菜がそんなことを言うかな?と思っていると海織が声をかけてきた。


「あっ。楓君が事実を知って固まっちゃった」

「海織。それ――本当に七菜が言ってた?」

「後半は私が考えた」


さらっと嘘を認める海織さんでした。七菜朝からくしゃみしていたらごめん。


「——海織。本当に七菜に怒られないようにね」

「大丈夫大丈夫。今日お土産一杯買ってくから」

「ってかそういえば――今からどちらに?」


俺はなんか違和感を感じていたため海織に確認する。ってか。早朝から出かけるのに行き先は知らないというね。いや、最終目的地は知ってるんだよ。さっきも少し触れたが、俺はおしゃれをする必要がないところ。俺の実家だとね。でもいくら何でもこの時間から行くとは思えない。だって始発だし。


「えっ。名古屋だよ?」


ほら。全く真逆の方向が行先になっていたである。だからなかなか昨日も出発時間だけ言って行先は言わなかったのか。


「……何故に名古屋なのか――って、海織。俺の実家に用があるとか言ってたよね?それになんか俺が最後の仕上げ。超必死に卒論を頑張っている時に『予定が決まった!』とか『特急券取れた!』とか『無理なら七菜連れて行く』とか。意味わからないこと言ってたよね?」

「そうだっけ?」

「そうですね。録音しておけばよかった」

「証拠がないならダメだね。認めれません」


俺と海織が話していると、いつもの電車。赤と白の3両編成。伊勢川島駅05時35分発の近鉄四日市行き普通電車がやって来た。ちなみにもう一度言っておこう。現在早朝。そしてこの電車は伊勢川島駅の近鉄四日市方面の始発電車である。うん。朝っぱらから動いている俺達である。電車が止まると俺と海織は車内へと入った。


朝の通勤時間前だが――それでも人はそこそこ乗っている電車。近鉄四日市駅に着く頃には後ろの車両はなかなかの乗車率となっていた。ちなみに俺と海織は先頭車両に乗っており。混雑はそこまでしてなかったので、普通に座席に座れていた。


俺達が伊勢川島駅から乗った普通電車は近鉄四日市駅に05時44分に到着する。この電車で四日市へとやって来ると、名古屋行き急行の始発に乗れる。あと、伊勢志摩大阪方面だと。始発の鳥羽行き急行や大阪上本町行きの特急などにも乗れる電車である。って、確か海織は名古屋に行くと言ってたから――もしかして俺達も始発の名古屋行き急行に乗るの?と思っていると。


「さあ楓君。急行に乗り換えだね」

「——実家と真逆……マジで」

「まあまあ良いんだよ。楓君のためだから」

「どういうことだか……」


はい。俺が全く現状わからないまま。俺と海織はその後近鉄四日市06時00発の名古屋行き急行にその後乗り換えましたとさ。俺達は一番後ろの車両へと乗ったのだが――まあすごい人に途中でなってましたよ。先頭車両なんて――ヤバそうですね。弥富駅や蟹江駅では――うん。押し込み状態でした。まあ最後尾はまだマシだったが――それでもですからね。はい。名古屋まで立ち席確定でした。

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