第647話 本当の予想外の時は――照れる
「楓君楓君次は抱きしめて」
「——精神的ダメージが蓄積中」
「えー、彼女とイチャイチャは楽しいでしょ?時刻表見ている時くらい」
「いや、時刻表に精神的ダメージ無いんですが」
まあそんなことを言いながら――先ほどから撫でろ!とか肩もみ!とかいう海織の指令を聞きつつ数十分。今の俺は――海織を抱きしめる。って座っていたので、くるりと海織が向きを変えてくっついてきたのだが――なんでしょうね。これ。なんか――抱きしめるというより。確保されたというか。基本海織がしがみついているというね。
「楓君楓君。まずこのポーズの写真沙夜ちゃんに送ってみる?タイトルペンギン確保!」
「やめましょう。何をしても俺が死ぬ」
「えー。こんなのじゃ死なないよ。恥ずかしくて楓君が沙夜ちゃんたちに会えなくなるだけだよ」
「うん。だろうね。そうなるだろうね」
「ほらほらポーズ」
「やめなさい」
自分のスマホに手を伸ばそうとした海織だったので、俺は届かないように海織を支えつつちょっと前に進む。
「あー。意地悪した。猫にならないからね」
「全て猫につなげてくるな」
「やらないよ?いいのかな?いいのかな?」
「——子供だ」
「はーい、子どもでーす」
手を挙げながらニヤニヤした表情で俺を見てくる海織——ってくっついているのですごく近くでニヤニヤされています。はい。
「……対処しきれん」
「にひひー。あっ。楓君楓君」
「うん?」
「はい」
「ちょっ」
海織がちょっと離れたと思ったら、俺の来ているペンギンの頭。まあフードなのだがそれをかぶせてきた。
「うんうん。ペンギン完成。良い子良い子」
そう言いながら海織は俺の頭を――いや、フードを撫でてくる。なんか変な感じが伝わって来ています。
「良いね良いね。良い手触り」
「——普通に撫でられた方がいい気がするのですが……」
「おっ。それは楓君よしよししてほしいのかな?赤ちゃんかな?してあげようか?にひひー」
「この子―—喧嘩を売っているというか。俺を怒らせたいのだろうか?」
「そんなことないよー。楓君で遊んでるだけ。怒らない怒らない」
「……遊んでるね。完全に」
「うん!」
それから海織は俺の頭――ペンギンのフード部分をしばらく撫でまくってきた。さらになんか「ペンギンは胡坐かかないと思うよ?」か言い出して――起立。となり――「おお、大きなペンギン。良い抱き心地だね」などと言いながら俺に再度くっついてきたのだった。うん。今日の海織さん甘えたい日なのかな?ずっとくっついているような。まあ良いいのだが――。
「楓君が甘えろってうるさいからね」
おいおい、人の頭の中の考えがわかるのかな?突然何を言い出す――ってそうか。海織はそういう子だった。うん。人の行動完璧に読んでくるお方なのでね。変な事考えないようにしないとである。
「……いろいろおかしいね。海織が人で遊んでいるのに」
「でも――楓君はどんなことでも、ちゃんと相手してくれて優しいから好きだよ?」
「——」
「あっ、照れた」
いやいや、急に何を言い出すんですかね?かわいい顔して――うん。ドキッとするからやめなさいである。
「——ってか。そういう海織もちゃんとちゃんと優しいけど――」
「でしょー」
「……自信満々だったー」
うん。にひっ。という顔をしながらこちらを見てそんなこと言ってくるお方。それが海織さんです。はい。
「ちなみに楓君私のどんなところが優しいのかな?いつも相手一緒に居てくれることかな?ご飯作ることかな?こうやってたまにちゃんと甘えることかな?」
「……聞いておいて次々と自分で言うというね」
「さあさあ楓君優しいと言ったんだから。何が。かもちゃんと言ってくれないと。あっ、一緒にお出かけすることかな?」
「どんどん言われていくのですが――でも」
「でも?」
「一番海織の優しさを感じたのは――七夕祭の前かな」
「七夕祭?」
何でそこ?という感じで海織がはて?という表情で俺を見てきた。
「ほら、おにぎり2つと卵焼き作ってわざわざ俺の部屋に夜食――夕食?として置いておいてくれたじゃん。あれは――びっくりとともにありがたかったね。うん。ありがとう」
「——あ、あー、あれ。そういえばそんなことも――」
あれ?海織忘れていた?いや――忘れていたというより――それで来たかー。という表情をしていた。
「ちなみに海織。その時の写真俺持ってるよ」
「えっ?写真?何で?」
「いや、あまりに嬉しくて――ほら」
そう言いながら俺はくっついている海織を支えつつ。机の上にあったスマホを手に取り。画像のファイルを――って、俺あまり写真を撮らないのでかなり前の事でもすぐに出てくるというね。ということで、七夕祭の前。海織がこっそり作って置いていってくれたおにぎりと、卵焼きの画像を海織に見せると――。
「——そ、そんなの残してたんだ――てへへ……」
「……」
珍しいというのだろうか。画像を見ながら海織が――照れた?というか。うん。演技なしの感じで普通に照れていた。どうやらちょっと予想外。の事で演技を忘れている?みたいだった。ってか。これ――いい流れでは?
「ってことで、海織。猫になってください」
「し、仕方ないなー。もう、楓君しつこいからしてあげようかな」
――あらあら。海織さん。意外とあっさり。うん。すると俺から離れて机の上に放置されていた猫セットを手に取ったのだった。
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