第638話 甘えたい時もある
本日の流れ……必要ないとは思うがね。
まあ朝から突然の訪問者からのお出かけ。お散歩のち。海織の家でのんびりと過ごした俺達。以上である。対して語るようなことはしていないかと思うが――うん。普通の休日かと思う。あと――出来ることならこれで終わってほしかった。
――――。
「じゃ、バイバーイ。海織ちゃん。また遊びに来るから。大学でー」
「ごちそうさまでした」
「いいよいいよ。いい感じにお菓子減ったから。こっちこそありがとー」
まず海織の部屋から斎宮さん七菜がで行く。
「宮町さん。お昼とお菓子どうもどれも今日も完璧」
「どうもどうも。あっ、そうそう白塚君は沙夜ちゃんに優しくしないとだよー。にひひっ」
「俺……十分優しくないか?なあ沙夜?」
荷物を持ち海夜の前を歩きながら声をかけた柊が、前を歩いている斎宮さんにも声をかけた。のだが……。
「どこが?」
冷たいお返事が玄関の方からは返って来ていた。
「おい。何でだよ。おかしいだろ」
斎宮さんと柊が……何か言っているのはまあいつもの事だろう。よく見るし。ちなみにそれを見ている七菜の視線は――またしてますよ。的な感じだった。うん。七菜もよくわかっているだな。
「仲良しだねー」
海織は海織で余計なことを言ったというか。そういう自覚はあるのだろうか――いや……な――違う。あるな。うん。わざと帰り際に今の話題を出してこの後バタバタが起こらないかなー。的なことを考えている気がする。海織だからね。うん。この海織の表情は危険だ。まあとりあえず、俺が柊たちと別れる。伊勢川島駅までは平和にこのまま進んで行ってほしいものだ。斎宮さんも海織のところでたくさんのお菓子にありつけて――今はご機嫌みたいなのでね。うん。これをあと30分ほど維持してほしい。と思いつつ俺も部屋の隅っこに置かせてもらっていた自分の荷物を持って、忘れ物がないか確認する。そして柊たちを追いかけるように玄関の方へと向かおうとする。
あっ、そうそう現在は、海織の家にみんなで遊びに来た日の夕方である。さすがに長居をしていても――ということで先ほど解散となり。まあ正確に言うと。海織が出してくれたお菓子。実家から届いたというものをほとんど食べ終えたから――と言ってもいいだろうが――まあ食べ物の事は下手に触れるとなのでね。特にお菓子ですし。うん。パクパク誰かさんたち食べてましたからね。まあそんなことがありまして、俺達はそれぞれの家に帰る――帰るはずだった。だった。というのは――うん。この時の俺にはわかってないのだが。この部屋の主はね。わかっていた。予想していた?いや、予定していたみたいだので――そう言っておこう。
まあまだ何も知らない俺は――。
「次の電車17時11分なんで、お忘れなく。現在03分ですので」
玄関のところで雑談中の4人に近づきつつ後ろから声をかける。すると――だった。
「あれ?楓君も帰るの?」
「——えっ?」
海織が「なんで帰るの?」という表情で、振り返りつつ俺に言ってきたのだった。いやいや俺も帰りますよ?はい。残るとか言う予定は無いですよ?みんなと一緒に自分の家に帰りますよ?なんだが――。
「楓君はお泊りでしょ?」
「——全くそんな予定無いですね」
唐突にそんなことを普通に言ってくる海織だった――いやいや本当に俺にそんな予定は無い。すると――。
「なるほどなるほど。楓くん楓くん。ここは泊まるべきだね」
「何で……」
何かを察知した斎宮さんが海織側に立ったのだった。そして靴を履く――と言うところまで斎宮さんは行っていたのだが。七菜と柊の間を抜けるように、俺の方にささっと移動してきて――小声で話しかけてきた。
「あれは海織ちゃんが寂しがってるんだよ。さっき言ってたけど。ここ2日一緒じゃなかったんでしょ?だから寂しいの。居てほしいんだよ。イチャイチャしたいの。だから楓くん残る」
「何を言い出すのか――ってたった2日――うん。2日」
「2日かもでしょ。だから海織ちゃん元気ないんだよ」
「——どこが?」
うん。本日の海織さん。いつも通りでした。はい。これでもそこそこ長い間――一緒に居ますからね。わかりますよ。今日も海織さん楽しそうに過ごしてました。はい。
「隠してるだけだよ」
「斎宮さん適当に言ってるでしょ?」
「そんなことないよー。ちゃんと私の直感。勘が言ってる」
「勘って言いましたが――って、いやいや顔が笑ってる」
ふと横を見ると。超ニヤニヤ顔の斎宮さんだった。お菓子パワー強いですね。みんなニコニコ。無駄なことにもニコニコですよ。すると斎宮さんはまたささっと先ほどまで自分が居た場所、靴の場所までまた七菜と柊の間を抜けていき――って、2人が変な表情をしていた。こいつら何してるんだ?ってね。まあ廊下ですからね。コソコソ斎宮さんが言ったところで3人に丸聞こえという。うん。あっ、海織は斎宮さんの後ろでニコニコ何も発することなくこちらを見ていました。はい。俺からは良く見えましたね。斎宮さんが見ていたかは知らないが――などと思っていると。
「——さあさあ楓くんは置いて帰ろう」
斎宮さんはそう言いながら靴を履き。ドアを開けていた。
「強制終了したよ」
さらに斎宮さん七菜の手を掴み――外へと歩き出したのだった。うん。謎。ちなみに七菜は慌てて靴を履いて斎宮さんに付いて行った。
「ちょ、斎宮先輩。何で私手を持たれてるんですか?ちょっと靴。靴脱げます。ちゃんと履けてないです」
「いいからいいから。七菜ちゃんは今日私のところ来る?」
「何でですか!?って靴くらい履かせてください」
「おっ、七菜ちゃんが沙夜のところに遊びに行くなら今日は俺も沙夜のところ――」
「柊。階段から落ちる?」
「落としちゃってください」
「——怖すぎるだろ。七菜ちゃん相変わらず厳しすぎる。俺そんな趣味ないんだが――」
「柊キモい」
「おい」
「黙ってください」
「めっちゃ俺の扱い酷っ!ってか、楓。なんかわからんが。じゃ、またー、ごゆっくりー」
3人は賑やかに海織の部屋を去っていったのだった。うん。俺は?どうなるのかな?
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