第636話 久しぶりにやって来た4

「——いやいや、宮町先輩から――それ聞いていいんですか?って、加茂先輩に聞いた方がいいですかね。加茂先輩、聞いて安全ですか?」


現在の俺達は、長太の大楠ので気持ちい風を受けつつ雑談をしていたって――次の話は柊と斎宮さんの話らしいが――うん。2人が追いかけっこをしている理由って、それ……俺達が話すような話題なんでしょうかね?七菜もいいのかな?って感じで何故か俺に確認してきているが――って、なんで俺に確認なのですかね。


「——うーん。そもそもなんで海織が知っているか。なんだけど――」

「まあまあ」

「いやいやまあまあじゃなくてですね。って――ホントあの2人ずっと追いかけっこしてる――あっ、柊がスライディング」


俺がふと2人の姿を探して――見つけた瞬間。柊がスライディングした。野球で例えたらいいかな?なんか1塁とかにズシャ―。という感じで滑り込んだみたいに――ちょっと遠くからでも砂埃が見えたのだった。

もちろんその光景を見ていたのは俺だけではなく。


「白塚君こけたね」

「こけました」

「あっ。斎宮さんが――こっち見ながら――ピースサインしてる。楓君あれ写真撮ってかな?」

「——どうだろう?」


ちょっとはっきりは見えないが――多分斎宮さんいい笑顔していると思われます。


「沙夜ちゃん強いね」

「強いというか。今のは白塚先輩がこけただけでは?」


海織のつぶやきに七菜が突っ込んだ。まあ確かに斎宮さんと柊はちょっと距離があった――って柊も優しいよね。多分斎宮さんが追い付けないギリギリというか――多分手を抜いて適度な距離で追いかけっこを楽しんでいましたからね。それもあってか。後ろを気にし過ぎた柊が足元を見ていなかった。というところだろう。


「で、何があったか七菜ちゃんたち聞きたい?」

「私は遠慮しておきます。はい」

「同じくだな」


うん。本人の居ない前で聞くのは――ってか。柊が先ほどなんか言いかけていたから――うん、下手に聞かないでおこうだな。


「えー、ニヤニヤできる話だよ?」

「なおさら遠慮しておきます」

「同じく」


俺達が話していると。柊が立ち上がり――うん。砂を落としている感じだった。それを見ている斎宮さん――楽しそうである。あっ、柊の背中をちゃんと斎宮さんが叩き砂を――ってそれはないな。多分背中は砂ついてないだろうし。あれは――多分笑っている斎宮さんだ。うん。仲良しですね。などと思っていると、2人がこちらへと戻って来た。


「楓ー。沙夜にいじめられたー」


戻って来るなり柊がそんなことを言ってきた。


「こけただけでは?」

「こけてたね」

「こけてました」

「——3人にもちゃんと見られてたのかよ」


どうやら柊は俺達がこけたの知らないと思っていたらしいが――うん。ちゃんと見ていましたである。


「どんくさい柊だからね。って。疲れたー」


そう言いながら斎宮さんは長太の大楠下ちょうど影になっているところに座った。


「沙夜がいきなり追いかけてくるのが悪い」

「柊が適当な事言い出すからー」

「昨日の夜甘えまくっていたくせに――ぎぇふき!」

「「「……」」」


――あれ?おかしいな。今斎宮さんは座ったと思ったんだが――今は俺の横に立っている。そして――俺の横でいじめられた報告をしていた柊が――5メートルほど離れたところでまた砂まみれになっていた。


パンパン。


「ふー、なんか聞こえたけど、気のせいだね」


仕事完了。と言わんばかりに斎宮さんが手を叩きながらそんなことを言い再度大楠の影に座ったのだった。


「だねー」


すると斎宮さんの話に合わせるかのように、海織が隣に移動して「はい。お疲れ沙夜ちゃん。飲み物飲む?」とペットボトルを渡していた。

斎宮さんが海織からもらった飲み物を飲みつつ海織と笑いながら雑談をしていると――固まっていた俺の横には同じくちょっとだけ固まっていた七菜がやって来た。


「加茂先輩。斎宮先輩すごいですね。白塚先輩真横に飛びましたよ」

「柊の身体がおかしな方向を向いていたのは気のせいだろうな」


俺は一瞬だけ視線に入ったことをつぶやくと――。


「そうだよ。楓くん気のせい気のせい」


笑顔で飲み物を飲んでいる斎宮さんが答えていた。


「ってか、斎宮先輩が隠していたのは。単に甘えていたこと」


七菜は小声でそんなことを言ってきた。うん。聞こえると――だからだろうね。でもこの距離。まあ聞こえていたらしく。斎宮さんではなく海織が斎宮さんの横から七菜のところへと移動してきて――。


「そういう事。昨日の夕方。荷物が来る前だね。その時に沙夜ちゃんとはメッセージで話していたんだけど、その時に沙夜ちゃんこれから白塚君ところに乗り込むって言ってたからねー、まあ予想は出来るよ」


そんなことをニヤニヤしつつ言った。もちろんそれに斎宮さんが黙っているわけはなく――。


「ちょっと、恥ずかしいから。勝手に話しまとめないでよ。海織ちゃん」

「あっ。沙夜ちゃんが照れてる照れてる」

「海織ちゃん!」


ベシベシと斎宮さんが海織と叩いているが――まあ効果なしだろう。すると海織がこの話は終わり。という感じで――。


「まあ、いい散歩も出来たし。そろそろ帰ろうか?お昼ごはんとお菓子あるから」

「あっ――賛成!あと海織ちゃんシャワー貸して」

「いいよー」

「私も甘いものお菓子欲しいです」


海織が言い出すと斎宮さん七菜が反応って――皆さん忘れてませんか?

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