第612話 彼女は待っていた3

「じゃ、楓君の片付けが終わって。ちょっと休憩したら買い物行こうか」


昼食後しばらくして海織がそんなことを言い出したのだった。


「了解ー」

「はーい。にしても、宮町先輩ところすごいですね。離れ?まであるんですか」


斎宮さんが海織の声により立ち上がり。七菜は前回俺達が来た時に泊まった場所を見ながら返事をしていた。


「今日は4人でここに泊まるからね。夜楽しそう」

「おー、なんか修学旅行みたいだね」

「うんうん。楽しそうでしょ?」

「「——えっ?」」


海織たちの会話を聞きつつ。俺はわっせわっせと片付けをしていたのだが――ふと聞こえてきた会話に七菜と同じ反応をしたのだった。

うん。多分俺と七菜は同じことで反応したのだと思うが――ってまあ、そうなるだろうとは何となく思っていたのだが――。


「えっと、一応確認だけど俺もその輪に入ってるの?男ですけど――」

「うん!」


はい。即答してくる海織でした。そしてそんなやりとりを聞いていた七菜はというと――。


「えっと、その――いや、加茂先輩が一緒は嫌という事ではないんですが――なんか今晩もめっちゃ寝れない気がしてきたんですが――はい、寝不足が続きそうです。出来れば何とか――」

「なんか七菜。気を使わせてごめん。大丈夫。俺は端っこで小さくなってるから」

「いやいや、加茂先輩は大丈夫って――むしろ斎宮先輩や宮町先輩が――危険で……睡眠妨害が――」

「それは何とも――だね。うん。俺に何とか出来るという事ではないような――」


俺と七菜が話していると。


「今日は4人で並んでごろ寝だね」

「賛成賛成!楽しそう!」


海織と斎宮さんがそんなことを話している中。俺は七菜の方を見て――。


「七菜。今、反対票を入れたら2対2になるか……と」


ふと。思いついたことを提案してみたのだが――見たのだが。だった。うん。言いながら気が付いた俺だった。もちろん俺が思ったことを七菜も思ったみたいで――。


「なりますね。でも――」

「——俺達に力があるか」

「です」


俺と七菜が多数決!と声を上げる前にこちら側で勝手に完結。うん。俺も言い出しましたが……言っていてすぐに気が付いたよ「あっ。待て、無理だな」とね。まあ特に何も起こさず。俺と七菜が既に諦めていると。


「明日も休みだし夜も楽しめそうだね」

「だねだね。昨日は七菜ちゃんが甘えさせてくれなかったけど。今日は広いところだから大丈夫だよね。うんうん」

「あっ、そっか、沙夜ちゃん昨日も七菜ちゃんと仲良く寝てるんだ。じゃあ今日は私の番かなー」

「あっ海織ちゃんが独り占めしようとしてる。それはさせないね。海織ちゃんには楓くん居るじゃん」

「えー、七菜ちゃんがいいなー。引っ張りっことかしてみる?」

「いいねいいね。七菜ちゃん綱引き」


俺と七菜の前では海織斎宮さんが――バトル。いや違うな。単にめっちゃ楽しんでいる雰囲気でそんな会話をしていたのだった。もちろん被害者となるであろう七菜は――。


「加茂先輩。私はバーベキューを諦めて帰った方が身のためですかね?今からなら普通にまだ帰れますよね?私綱じゃないんですけど――」

「——ノーコメントだな。まあ逃げることをおすすめというか。俺もなんか逃げたい気はしているが――ってか、俺一緒に居る必要なくない?うん。むしろ俺の方が逃げてもいいような――まあ逃げれないと思うが」

「——ですよね。もう手遅れ感が半端ないです」


うん。七菜も大変。ホント大変だ。って――これはどうなるんでしょうかね。俺も――先が思いやられるというか。今日はちゃんと休めるか心配になってきました。はい。


まあそれから買い物というミッションがあるため。俺の片付けが終わると同時くらいに海織たちが「出かける準備OK」的なことになりまして――って、おかしいな。俺が片付けを終えて、休憩したら――とか海織は言っていた気がするんだが――うん。休憩なしですね。俺だけ。うん。まあいいのだが――そんなに疲れるようなことはしてないのでね。


はい。それからは再度海織の運転する車で俺達はお買い物へ向かったのだった。道路はスイスイ快適であっという間に俺達はスーパーへと到着したのだった。


「お肉お肉」

「フランクフルトとかもあるかな?」


現在俺はカートを押して楽しそうに会話をしている海織。斎宮さんの後ろを歩いている。


「あっ。いいねいいね。あったら買おうか」

「後はー」

「野菜も欲しいね」

「うんうん。バーベキューには必要だね」

「あー、魚介系も何かあるかな?焼いてみたいなー」

「あー、エビとか。ホタテあったら欲しいかも。なんかリッチな感じだし」

「それって、冷凍とかでないのかな?」

「どうだろう?ある気がするから――探してみようか」

「だねー。何があるかなー。楽しみ」


うん。テンションの高い2人です。これから何を買うかの話し合い楽しそうです。ちなみに特に俺は何も言わずついていくだけ――。


「あっ――」


――ガサッ。


「……」


うん。前の2人はいいとして、お隣さんには話しかけようかな?


「—―うん?なんですか?加茂先輩?」

「いや、さらっと入れたなーと」


俺はカゴの中へと入った――これは――冷凍マンゴーですね。うん。俺の近くを歩きながら周りを見ていた七菜がポイと冷凍のところから袋を1つ取ってカゴの中に入れていたのだった。


「おいしそうで――つい」

「まあ美味しいだろうね。ってことであと2つくらい買ってもいいかと。1つじゃすぐになくなるから」

「あっ、いいですか?じゃあブルーベリーも追加で――マンゴーを追加っと」


俺が言うと七菜が先ほどマンゴーを取っていた冷凍の棚のところまで戻り――商品を持って「冷たい冷たい」と言いながら戻って来てカゴへと入れた。


「なんか予想より増えたが――まあいいだろ。多分食べるだっろうし」

「お2人を追いかけましょうか」

「だね。多分なんか言われる気がするけど――」


それから俺と七菜は既に肉や魚介類を見ていた海織と七菜を追いかけたのだった。

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