第584話 混ぜるな危険15

突如として始まった斎宮さんのミックスジュース作りとでも言うのか。うん。怪しげな実験が始まった俺の部屋。1人目の犠牲者……という言い方は悪いかもしれないが。いや、出来上がっている飲み物の色から――怪しすぎるので犠牲者でいい気もする。まあ今のところは斎宮さんのお隣に居た七菜が一番危険な状況で、その七菜も誰かにパスをしようとしている。あれは危険と七菜も瞬時に思ったのか。まずは先ほどまで話していた海織を巻き込む準備に出たらしいのだが――。


こちらはこちらでびっくりだった。

ついさっきまで居たはずの海織の姿がないというね。俺も海織が動いたことに気が付いてなかったので――どこへ?と思っていると。


「楓君。これ片付けちゃうねー。ゴミ袋ゴミ袋ー」


海織の声は後ろから聞こえてきたのだった。

いやいや、マジで海織が動いたの俺知らないんですが。そんなことを思いつつ振り返ると。キッチンにてゴミ集めをしてくれている海織が居たので――ここしかない。このタイミングを逃すと――と、俺も立ち上がり。海織の方へと素早く向かったのだった。


「あっ、加茂先輩が逃げた!」


後ろからは七菜のそんな声が聞こえたのだが――七菜よ。俺はまだ斎宮さんに捕まってないである。うん。声をかけられてないからね。声をかけられていたら、味見というか――毒見から逃げたになるかもしれないが。今はまだ斎宮さんからお声がかかってないので、俺は片付けに動いただけである。うん。


「——海織。片付け手伝うよ」


さっと海織のところへと移動した俺も海織と同じく。片付けを開始したのだった。


ちなみに食べ終えたものは順番にとりあえずキッチンに運んでいたので、それをゴミ袋へと入れていく。うん。お皿とは使ってなかったのだが。ゴミは結構あるというね。まあ料理の量もたくさんあったのでね。そりゃそうかである。

俺がゴミ袋へとゴミを入れていると――。


「楓君。逃げてきたの?ダメだなー」


俺の横に来た海織が笑顔でそんなことを言いつつ俺の肩を突っついてきた。


「いやいや海織もでしょ?」

「なんの事かなー」

「謎なドリンクから逃げたでしょ」

「あはは。まああれは大丈夫だと思うよ?」

「海織は逃げるのがうますぎる。ってあれは大丈夫?嘘でしょ。すごい色な気がするんだけど……」

「うん。多分ね。沙夜ちゃんが入れたの見てたけど――まあ大丈夫かな?って」


海織と話していると部屋の方から――。


「……あっ。意外とこれ……いける」


チラッと部屋を見てみると、斎宮さん特性ミックスドリンクをチビチビ飲んでいた七菜からそんな声が聞こえてきたのだった。うん。結局七菜がまず飲むことになったみたいです。

ってか。見た目から判断できないですね。うん。まあ嫌な予感しかしないので俺はあちらには関わらず。片付けを続けたのだった。するとそこからミックスドリンク作りがエスカレートしていきまして、まあ俺と海織がこちらに居る時点で部屋の方には止める人が居ないのでね。


「これとこれと――」

「これも入れてもありかもですね。意外とこれ作るの楽しいですね」

「でしょ。組み合わせがいろいろあるし。量でも変わるからね。楽しいんだよ」


斎宮さん七菜が紙コップに謎なものをどんどん作りだしたのだった。うん。七菜も何かに目覚めたのか。斎宮さん側へと吸い寄せられていったのだった。

ちなみに試飲をすることになったのは――近くに居たお2人さんだ。


「お兄ちゃんはこれ」

「柊はこれ」


七菜は難波先輩に――まあ変な色ではないものを渡して――。

斎宮さんは――またまた得体のしれない色のミックスを作り柊へ渡していた。


ちなみに柊も難波先輩もまあお酒が入っていてもまだちゃんと周りの話は聞いていたらしく。まあ飲めるものを2人が渡してきたのだろうと思ったのか。何も怪しむことなく渡された飲み物を飲みまして――。


「どれどれー……おっ。不思議な味だがありだな。だが美味いぞ」


七菜のミックスジュースは普通に難波先輩が飲んでいた。どうやら七菜のは飲めるものだったらしい。


「相変わらず沙夜のは得体が知れない――」


柊もそんなことを言いつつも多分飲めるのだろうと思ったのか普通に飲んだのだが――。


「……」


その後柊はフリーズしたのだった。固まっただな。何とか飲みこんではいたが――その後苦しんでいた柊だった。毒でも飲まされたのか床で苦しがっている柊だった。


「——沙夜ちゃん沙夜ちゃん何合わせたの?」

「全部混ぜ!ここにあったのとか全部液体は入れてみた」

「……そりゃ――そうなるね。って沙夜ちゃん。ここ調味料もあるけど――」

「あー、入れちゃったかも。でもまあ大丈夫かな?」

「……あははー」


ちょっと様子見に言った海織も笑顔が引きつっていたのだった。うん。あれは――ダメみたいですね。マジで柊が苦しんでいる。少量であれだからな――うん。危険だ。


そうそう、このまま変なミックス大会が続いてもなので――。


「あのー、皆さん。お帰りの時間はお忘れなく。この後の湯の山方面は10分29分なので――はい。苦しんで動けなくなる前にお帰りの準備をお願いします。こちら宿泊施設ではないので」


時間もいい時間だったので俺は一応声をかけておいたのだった。

ちなみに難波先輩はこの後普通にお帰りになりました。難波先輩ちゃんとタクシーを呼んでいたというね。いつの間に――だが。ホント「じゃ!」という感じで帰って行った。柊と斎宮さんは俺が伝えた電車に多分乗れたはず。うん。多分ね。家を出た後はわかりませんである。ちなみに苦しんでいた柊は――お茶を飲んだりで何とか復活はしていたが――かなり口の中に何かが残ったのか。ずっと変な表情をしていたのだった。


ちなみに海織と七菜は3人が帰った後もしばらく俺の部屋で話していて――日付が変わるくらいにやっと隣へと移動しました。はい。今日の海織は七菜の部屋を選んだみたいでした。その際に七菜の悲鳴がありましたが。俺は――そっとドアを閉めたのだった。


うん。今日のまとめ。混ぜるのもほどほどにです。後日柊から翌日まで体調不良が続いたのを聞いたのでね。胃がむかむかするというか。何かわからない現象が続いていたらしい。はい。俺は関わらなくてよかったー。である。 

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