第585話 お寝惚け電車

ぴゅーぴゅーとどこからか寒そうな風の音が聞こえてきている。

まあそうだよな。確か外は寒かったから……うん。最近は寒さの厳しい日々が続いていて――って、あれ?なんかおかしなことを俺は言ってないだろうか?なんか季節がおかしいような――あれ?うーん?特に……おかしくない?ならいいのだが。まあいろいろあるとね。記憶が混乱することもあるか。


にしてもだ。何でぴゅーぴゅーと風の音が聞こえてきているのだろうか……確か今は――。


「——寒いな。何でだ……?って、窓が開きっぱなしだったか。あー、洗濯を片付けた時に少し開きっぱなしになったか。そりゃ寒い風が入ってきているわけだな」


現在俺は自分の部屋にて――多分うとうとしていた。そしてちょっと夢の世界も見ていた気が――うん。確か夢の中では……なんだったかな?そうそう、いつものように海織と話していて――そういえば斎宮さんから何か連絡が――あれ?これは夢じゃないか?


現在は平和な年末年始だ。俺は実家にも帰る予定がなかったため。こちらにて今年はのんびり大晦日……ってやっぱりおかしい?ぼんやりとだが。夢の事をはっきり覚えすぎているような――あっ。スマホを見ればいいのか。確か夢では海織が居て――斎宮さんから何か連絡が――俺はそんなことを思いつつちゃんと現状を確認するため、スマホを手に取った。ちなみにこの時点で夢は夢ということはわかっていたのだが――いや、部屋に海織が居ないのでね。どう見ても今は俺1人だ。だから先ほどの方が夢で――多分メッセージとかも入ってないだろうと思いつつも一応確認してみたが――うん。特に連絡なしです。ちょっと寝ぼけていて夢と本当に記憶が混乱していたようだ。


ってことで、おかしくないよな。うん。大晦日。特に実家に帰る予定がなかったから今年は1人で過ごしている。という現状で正しいようだ。


俺はちょっといろいろなことを考えつつも。スマホを置いて立ち上がり。冷たい風が入り込んできている場所。少し開いていた窓を閉めるために窓際へと向かった。

うん。暖房とかも付けてなかったので、部屋の床もひんやり冷たい。歩くたびに足元から冷たさが――うん。靴下を履いていても感じることのできる寒い部屋だった。


俺は窓際に移動しつつ。ちょっと寄り道という形で先に暖房を付けてから窓際へと移動した。


現在はちょうど日の入り時刻だったらしく。ちょうど夕焼けが綺麗……って、夕食どうしようかな?あー、正月ってお店開いてたんだった?まあコンビニは開いているか。などと俺思いつつ。少しだけ開いていたドアを俺は閉めた。うん。ぴゅーぴゅーと入り込んできていた風は収まった。冷たい風は遮断されたのだった。これで暖房が動き出したら暖かくなるだろう――俺がそんなことを思いつつちょっと窓から外の様子を見ていると――。


ガチャ。


玄関の方でドアの開く音が聞こえたのだった。

いやいや、何で俺の部屋は普通に玄関の鍵が開くんですかね。ちなみに鍵はちゃんと閉めてあったはずです。うん。先ほどまで寝惚けていたのでね。閉めてなかったかもだが――でも今はドアの開く音ではなく。鍵が開いた音だったので――鍵は閉まっていたのに、俺が玄関に行くことなく開く音がしたのだった。


ちなみにだが親が来たとかそういう事ではない。まあ親が来るとか絶対ないな……まあ昔みたいに突然やって来ることは1パーセントくらいはあるかもしれないが。でもだ。合鍵なんて渡してないのでね。この家の合鍵を持っているお方といえば――。


――ガチャ。


「寒い寒い。楓君起きてる?」


俺がやはり来たか。と思いながら玄関の方を見ていると、ドアの開く音とともに、海織の声が聞こえて来て――普通に室内へとやって来て、マフラーやコートを脱いで――こちらへとやって来たのだった。


「あの――海織さん?突然やって来ることには――まあ何も言わないけど。なれたから。でもさ。今の起きてる?って聞く時間ではない気がするんだけどね」


先ほども言ったが今は夕暮れの時刻である。


「楓君の事だから。今日は大晦日。することないな。のんびりしてようかなー。みたいなこと考えて。壁にもたれてうたた寝してるかと思ったんだけどね」

「……ちゃんと立ってますね。うん。ちゃんと起きて立ってますが?」

「だねー。ちょっと予想が外れちゃった」

「……」


――何だろう。いつもの事だからかあまりは気にならないのだが――でもね。やっぱり気になったわである。ホント俺は海織の事に関して驚くことが無くなって来たが――うん。なんでこの部屋に居なかったはずの海織が数分前の俺の行動を当ててくるかだよ。うん。確かにちょっと寝てたけど――まあそれは置いておこう。うん。

今の俺は起きているのでね。下手に海織に予想通りという必要はないだろう。変に海織のテンションをあげてもなのでね。うん。大晦日くらいのんびり。平和に行きましょう。


「ってことで、起きてた楓君。今日は何も予定無いよね?」

「まあ――もうあと数時間で今日というか今年が終わりますね。そして今から予定というのは――なかなかないですね。まあちょっと食べ物とか買いに――コンビニ。とかいうことはあるかもしれないけど……」


そうそう、夕食どうしようかだったんだよね。冷蔵庫に何かあればいいが――って海織さんの表情が――危ない表情をしているように見えるのは俺だけでしょうか?とってもいい笑顔をしているのですが――。


「うんうん。じゃあ大丈夫だね」

「……あの、何が大丈夫なんですかね?雰囲気的に嫌な予感がしてきたのですが……」


俺は今平和な大晦日を予定しているのだが――うん。俺が夕食どうしようか?という横で海織が何か言いそうな雰囲気ですね。はい。


まあ結果から言えば、大移動になりましたよ。

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