第580話 混ぜるな危険11
「あれ!?お兄ちゃん!?」
玄関の方から七菜のそんな声が聞こえてきたのだが――お兄ちゃん?七菜がお兄ちゃんっていう人って――難波先輩しかいなくないか?うん。間違いない。柊の事をお兄ちゃんとは――絶対に言わないだろう。ありえないことだな。うんうん。
ってこんなことを思っていると。もし。もしだ七菜にバレた時になんか怖いので……そっと封印しようと思う。はい。封印完了。誰にもバレていない――はず。いや、ここにはいろいろと勘が言い方が居ますからね。まあ今は玄関に居るから大丈夫だろう。
その後再度俺は、聞こえてきた七菜の声からして難波先輩が突然やって来たのだろうと頭の中でイメージをしつつ俺も玄関を見ようとすると――。
「おお、みんな揃ってるながはははは。七菜もこっちに居たのか。鳴らしても居なかったからな。仕方ないから加茂ところ行くかと思ったら――こっちだったか。がはははは。そうだそうだ。これお土産だ。みんなで食うぞ。ちょうどよかったな!晩飯まだだろ?食ったか?まあ食ってても食えるだろ?がはははっ」
うん。見なくても大丈夫でした。
この元気な声からして難波先輩ですよ。まあ一応最終確認のため部屋から玄関を覗くと――うん。間違いはなかった。たくさんの袋。荷物を持ったムキムキ先輩が今日も元気に立っていたのだった。
「——ってか何故に難波先輩が……?」
俺が玄関の様子を見つつ1人でつぶやいていると――。
「あっ。難波先輩。どうぞどうぞ」
海織のそんな声が聞こえて来て――うん。俺はこのまま中で待っていた方がいいかな?俺が玄関へと行っても、玄関が詰まるのが目に見えているのでね。はい。このまま部屋で待機をすることにした俺は顔を引っ込めたのだった。
「おうおう、加茂邪魔するぞー。これお土産だ!」
「えっ。あっ。ありがとうございます。そしてこんばんは」
すぐに室内へと入って来た難波先輩に持っていた袋などを全部渡される俺。うん。これは――食べ物見たいですね。来る時に買ってきたのだろうか?どこかの袋からいい香りがしてきている。あと、なんか1つめっちゃ重たい袋があるんですが――って、ペットボトルか。袋を見てみるといろいろな飲み物が詰められていた。って、難波先輩さすがだな。これを軽々持っていたのか……俺地味にしんどいである。
「ちょっと暇になってな。七菜の様子見がてら来てみたが。今日は何だ?宴会か?」
「いやー、宴会というか。集まっていたというか――」
「ガハハハッ。まあ何でも楽しそうなことしてるのはいい事だ」
「ところでこれ何が入ってるの?いい香りはしてるけど――」
難波先輩と少し話していると俺の持っていた袋を斎宮さんが覗き込んできた。
「がはははっー。単なる食い物だ。さっき買ったばかりだな。七菜ところで何もないのもだからな。先に買っといた。がはははー」
「ちゃんと私の家にも――あっ、今はあまりないかも……」
斎宮さんの後ろからは驚きというのだろうか?ちょっと困った感じにぶつぶつ言いながら七菜と海織が部屋へと戻って来た。
「まあまあ七菜ちゃん。せっかく難波先輩が食べ物持って来てくれたんだし。食べようよ。って、白塚君もそのうち帰って来るよね?」
「あー、そういえば今連絡が――」
「なんだ白塚も居るのか?これりゃちょうどいいさあさあみんな食ってくれ食ってくれ」
先ほどの柊のメッセージを伝えようとしていた俺だが――難波先輩が既に床に座り込み食べる準備OKとなっていたため。
「……まあ、とりあえず何があるかか」
一度中身を確認しようと俺は難波先輩から渡された袋を置いた。
「おうよおうよ。適当に買ってきたんだがな。とりあえず肉だろ。あー、野菜もあるぞ!」
難波先輩の話を聞きつつ中身を見てみると――。
やはり重たかった袋にはペットボトルがたくさん……ってこれは重い。うん。10本弱もペットボトルが入っていた。
その後他の袋を見てみると。まず焼き鳥が――たくさん。さらに唐揚げもたくさん。難波先輩何人分買ったのだろうか――七菜と2人で食べる予定ではなかったでしょ。という量が入っていた。
「楓君それ。袋だからさ。温めてそのまま机の上に広げたらいいんじゃない?温めOKって書いてあるし」
「確かに移してるより楽かも」
海織に言われ俺がとりあえず焼き鳥。唐揚げを出すと海織が商品が入っていた袋を開いていく。冷めているのは温めてから開けていった。
「あっ、美味しそう」
「さあさあ食え食えだな。加茂ー。炭酸取ってくれ」
「えっ、あっはい」
俺はペッとボトルが入っている袋から炭酸飲料を見つけ難波先輩に渡すと――美味しそうに飲んでいた。はい。強炭酸とか書いてあるが――グビグビ飲む難波先輩だった。
「お兄ちゃんホント何しに来たの?」
「だから言っただろ?七菜の様子見だ。生きてるか確認してこいとか言われたからな!がははははっ。まあ生きてたって、言っておくよ」
「何で死んでる扱いなの!?ってか普通逆でしょ。お兄ちゃんの方が行方不明だったじゃん」
難波先輩の元へと移動した七菜は――なんか難波先輩をポコポコ叩いているが――あれだな。難波先輩には効果なしってか。
「和むねー。海織ちゃん」
「うんうん。和む和むだね」
うん。海織と斎宮さんが言っていたが。ホント和む。微笑ましい場が出来ていた。
なんやかんやで七菜と難波先輩仲良しなんだよな。うんうん。まあ難波先輩は――。
「ガハハハッ。にしてもチビは変わってないな!がはははっ」
「うるさい!」
「……」
うん。いつも通りか。楽しそうなのでそのままにして俺は難波先輩からのプレゼントをさらに出していくと――。
「あっ。ローストビーフまである」
「ローストビーフ!?」
袋の一番底にかなりお高そうなものが入っており。
俺がつぶやいたことにより。本日はずっとローストビーフを食べたがっていた斎宮さんの目が光ったのだった。うん。ホント目が星に見えたのだった。
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