第576話 唐突に始まる1人旅

「ほっほっほっ。じゃ、行ってくるぞ」


白いふさふさの髪を揺らしつつ1人の男性が自宅を出発する。


この場所は男性にとってはもう何年。何十年と住んでいる場所だ。

家の玄関の周りにはいろいろな花が咲いている。ちなみにこれは男性が育てているものではなく。この家に住むもう1人の女性の趣味である。まあ普通に奥さんである。今のところ姿は見えないが――そうそう。あと今は見えていないが。家の庭の方は畑が小さいがあり。いろいろな野菜が育てられている。余談だが。男性の苦手な野菜もいくつか育てられているが――何も言えない男性である。奥さんはちょっと楽しみつついつも男性が苦手にしている野菜を作っているのは――未だにばれていないことである。


おっと、家の事を話している間に男性の姿が小さくなってしまった。追いかけよう。


男性はいつも歩いている道路をのんびりと歩いて行く。

しばらく歩くと、いつも利用している小さな駅が見えてくる。この駅は無人駅で自動改札という物は無く。小さな駅舎に券売機があり。その券売機の反対側にベンチがあるだけ。ちょっと暗い感じの駅舎である。

ちなみに誰でもホームへは出入りが出来る場所であ——おっと、訂正だ。少し前にICカードとやらが使えるようになったからその機械が立っているな。って――ホームへと自由に入れるのは変わってなかったか。自動改札ではないのでね。ICカード用の機械が立っているだけなので、出入りは自由のままである。

まあICカードをタッチする真新しい機械があるってことだ。ぱっと見は昔懐かしい駅舎というか――言い方が悪いがボロであるので、ちょっと暗めの小さな駅舎内で真新しいICカードをタッチする機械は異質な感じがしているが――毎日見ていると慣れてくるものでもある。

男性はいつものようにICカードを機械にタッチしてホームへと入る。ホームはこれこそ昔から変わってない。昭和の雰囲気が残っている場所――って、ここもか。駅名の看板だけ新しくなっているため。ちょっとそこだけが――と、すべてを紹介する前に踏切の鳴る音が聞こえてきてしまった。直線の線路が続いているので電車の姿も小さいが既に見えてきている。

にしても、この男性はぴったりと時間通り歩いていたらしい。駅での待ち時間ほぼなしである。

男性は踏切の音が鳴る中。いつもと同じ最後尾の場所へと移動している。そして何度も、ほぼ毎日利用しているからだろう。男性の身体はホームの最後尾のちょっと手前。あたりで止まる。そして線路の方を見る。幅の狭い線路が視線に入る。そうそう男性の足元に乗車位置が書かれているということはない。男性はいつも通り。という感じでその場にただ立ち止まっただけだったみたいだが――。

それと同時に先ほどは小さく見えていた電車の姿が大きくなり。また走行音もしっかりと聞こえてきた――と思ったと同時に明るめの緑のライン?と言えばいいのだろうか。上半分が白。下半分が明るい緑色の車両が駅へと電車が滑り込んでくる。小さな3両編成の電車だ。たまに2両編成の時もあるみたいだが。最近では3両編成ばかりである。って、これは余談だな。今は3両編成の電車が駅へと到着したである。そして立ち止まった男性の目の前にはちゃんと車両のドアが来ていた。ほぼズレなしである。


電車が駅に止まり。ドアが開くと男性は降りる人がいないことを確認してから車内へと入って行く。

その後の男性は空いていた1人掛けの席へと座る。そうそう駅舎は古かったが。電車はかなり新しい。まだ少し前に新しくなったため。車内はかなり綺麗だ。座席のシートも床も窓もどこを見てもまだ新しさがうかがえる。


男性が座席へと座ると電車はすぐに発車ベルが鳴り。終点のあすなろう四日市駅へと向かって走り出した。


そうそう、男性があまりにもスムーズに歩いて行ったので紹介が遅れてしまったが。現在男性は四日市あすなろう鉄道に乗ったところである。

ここからは10分弱のいつもの電車移動である。


大きく揺れるのはいつもの事。男性もいつもの事という感じで全く気にする素振りもなく。いつものようにうとうとと、のんびりした時間を過ごしている。


その後数分電車に揺られた男性はあすなろう四日市駅へと到着した。

いつの間にかそこそこの乗車率になっていたのらしく。ちょっとした人の波が出来ていたが。男性はその波に上手に混ざり今度は自動改札を抜け。一度ここでICカードをタッチして、近鉄線へと乗り換えるために近鉄線の改札。近鉄四日市駅へと歩いて行く。


男性が今目指しているのは湯の山温泉駅である。少し歩いて今度は近鉄線の自動改札を通過する。ここで再度ICカードをタッチである。スムーズに男性は進んでいく。


朝の通勤通学のピーク時間は過ぎていたためか。近鉄四日市駅の湯の山線ホームは空いていた。落ち着いた感じの午前中の時間である。男性は湯の山線のホームへと到着すると既に止まっていた3両編成の電車の中へと入って行く。こちらの電車もいつも乗る電車——って、今日はラッピングの車両だった。3両ともがラッピングにより明るい感じになっている。電車の車内は空いていたので男性はそのまま空いていた座席に座る。

男性が座席へと座り少しして電車の発車時間となり電車は近鉄四日市駅を発車した。

座席へと座っている男性は先ほどはのんびり。うとうとしていたが。今度はのんびりと車窓を楽しみつつ移動していた。

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