第577話 唐突に始まる1人旅2

白いふさふさの髪の男性がのんびりといつもにように電車に揺られ移動中である。


男性の乗った電車は空いており。静かな時間。電車の走行音が心地よく響いている。

ちなみにもう少し朝早く男性が移動するときは、ほぼほぼ始発の電車に乗っているのだが――それはまた別の話。少し話しておくと男性はなるべく空いている電車を選んでいる。なので教え子と遭遇する確率は低い。まあそれでも遭遇するときは遭遇しているがね。


その後も男性はいつも通りのんびりと平和な電車移動を車窓を見つつ楽しんでいる。


11時28分男性の乗っていた電車は湯の山温泉駅へと到着した。ICカードを改札のところにある機械にタッチし。男性は改札を抜けていく。家からここまで、大変スムーズに男性はやって来た。

ここから男性は本日も仕事場。大学へと向かう。駅から地味に上り坂がきついが――男性には全く問題はない様子だ。普段からよく出歩いているためか。足腰は強いらしい。既に足取り軽く駅から大学の方へと歩き出している。


湯の山温泉駅に着いた男性は。同じ車両に乗っていて、大学方面へと歩いている学生に混ざりつつ大学への道を進んで行く。ふと横を見ればドーンと山がある。男性は「最近山には登ってないの。そのうち登るかの」などと思いつつ。あと、周りの様子を見つつ歩いて行く。ってか。学生より歩くスピードが速い男性だった。話しながら歩いている大学生と思われる集団を抜いていく――また抜いていく。学生たちは気にしてない。または話しているから気が付いてないのかもしれないが。男性はスタスタと歩いて行く。何歳か気になるところだが――シークレットらしい。何故にシークレットなのか。それもわからない。


「ほっほっほー、夕方まで天気はもたんかのー。雲が多くなってきたの」


男性はちょっと雲の出てきた空を見つつもスタスタと大学の方へと進んで行く。ちなみにだが今のところ。まだ少しだが青空が見えている……って、ちょっと空を見ていると男性の姿はもう見えなくなっていたのだった。早い。マジで歩くスピードの速い男性だった。


――――。


まだ雨は降ってきていないが。空が雲に覆われて青空が見えなくなった頃の事。

男性が湯の山温泉駅へと戻って来た。時間は15時20分過ぎだった。この日の男性はちょっと作業をしに来ただけだったらしく。早い帰りのようだ。長いときは朝から夜遅くまで居る事もあるが――今日は短い日だったらしい。気のせいだろうか。行き来た時よりも足取りが軽い気がする。


「ほっほっほー。良い時間じゃ32分か。よしよしじゃ」


湯の山温泉駅へと戻って来た男性は、次の電車の発車時刻を確認してから改札を抜けていく。またICカードをタッチである。


男性が少し湯の山温泉駅で待っていると湯の山温泉駅15時32分発の近鉄四日市行きの普通電車が3両編成で駅へと入って来た。この電車もラッピングの車両だった。今日は普通の車両には当たらない日らしい。


帰りはそこそこの学生に混ざりつつ男性は車内へと入り座席へと座る。行きの電車よりは人が多く。少し賑やかな車内だった。本当はもう少し時間をずらしてもいい問題なかったのだが。男性はちょっと寄りたいところ。行きたいところが出来ていたため。今日はこの時間の電車に乗っている。


ちょっと寄りたいところというのは、行きの電車で、ふと目に付いた車内にあった近鉄線の路線図を見て思いついた場所で、今はそこへと向かっている。

ちょうど今も男性が座ったところの目の前にその路線図は見えている。って――どうやらたまたま行きに乗って来た電車と同じだったらしい。さらに男性は行きと同じ車両。同じ場所にたまたま座っているらしい。まあそれは置いておいて、その路線図は正面にあるのだが。ちょっと細かいため文字までは男性からは見えてない。が――男性はそれでも問題なかった。頭の中にその路線図が入っているためだ。細かなところまで全て入っている。


「ほっほっほっ。雨が降らんといいがの。まあ降っても問題ないがの」


路線図の方を見つつ男性がそんなことをつぶやいた時。発車ベルが鳴り電車は湯の山温泉駅を発車した。


男性の乗った電車は定刻通り走り。終点の近鉄四日市駅には15時59分に到着した。いつもなら男性はここで買い物をしてから帰ったり――あっ、買い物というのは奥さんにおつかいを頼まれたときにしている。まあおつかいが無くても、たまにふとした思いつきで何かを買って帰ったりしていることもあるが。おつかいが無ければ基本男性はこのまま直行で行きも乗って来た四日市あすなろう鉄道の駅。あすなろう四日市駅へと向かうのだが――今日はどちらでもなかった。


「ほっほっほー。じゃ桑名くわなまで行くかの」


近鉄四日市駅の湯の山線ホームへと降り立った男性は、また独り言をつぶやきつつ。今度は名古屋方面の方へと向かって行ったのだった。すぐに男性の姿は他の乗客の波へと飲まれていったのだった。

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