第541話 まっしぐら18
俺と斎宮さんはまだ止まらなかった。というか。この時の俺達2人は、とあることがすっかり頭から抜け落ちていたのだった。
集合時間ということをね。
だが。それに気が付くのはまだ先の事。おまけにこの時斎宮さんが――。
「楓くん楓くん。さっきお茶している時に調べたんだけど。このあたり夕日もきれいみたいだから高台行こうよ。めっちゃ綺麗な写真あがってたんだよ。今日天気いから絶対いい写真取れるからさ!」
そんなことを言いだしたので、俺と斎宮さんの2人に、いろいろまわったからそろそろ駅へと戻る。という選択肢が生まれることがこの時はなかったのだった。
って――普通ならこの時に「夕日」という言葉が出てきたので時間を気にしてもいいのだが。何故か気にしなかった。気が付かなかった2人だった。うん。普通に2人で気になったところに遊びに来ました!という感じにいつの間にかなっていたのだった。
あれだ。楽しいといろいろ周りが見えなくなるんですよ。はい。
――――。
「——斎宮さんが半端なく元気」
「もちろん!せっかく来たんだから楽しまないと」
ここまででもめっちゃ歩いたけど、ホント今日の斎宮さん元気だな。とこにゃん効果なのか。すごいな。いや、猫がすごいのか?焼物もすごいの?などと俺は思いつつも。ここまで来たのでね。それにかなり歩きまわったが。まだ特に疲れもなかったし。楽しんでいる斎宮さんにそのままお供することになったのだった。
その後はすぐに移動となった。ちなみに斎宮さんが「夕日がきれいなところまでは、調べたから任せて!」と言いつつ歩いていたのですが――なんか同じところ行ったり来たりになったのは――触れません。はい。ちょっとしたミスは誰にでもあるんですよ。まあ同じところ2回通りました。
そんなこんなでちょっと予定よりもたくさん歩いたが。俺と斎宮さんは高い台へと何とか到着していた。
って、本当に夕日がきれいなところだったので、ちょっと余分に歩いたということはすぐに頭から消えたのだった。
俺と斎宮さんがやってきた場所は既に数人。観光客?と思われる人などが居た。カメラを持った人や、ぼーっと夕日を見ている人などのんびりとした感じの良い空間がそこにはあった。うん。斎宮さんよくあの短時間で探した。調べたな。と俺は思いつつ。斎宮さんや周りの人と同じようにスマホで撮影。うんうん。めっちゃ夕日が綺麗です。感激レベルですよ。はい。
オレンジ。すべてがオレンジと言えばわかりやすいのだろうか。とにかく全体がオレンジ。燃えるような色の空と――少し夜がこんにちは。という感じのとってもきれいなグラデーションとなっていた。なので俺の隣では連写の音が聞こえつつ――。
「やばっ。めっちゃいい感じじゃん。すごいすごい。楓くんもうちょっとこのままちょっと見てよう!これすごい。なかなか見れないよ。これあたりだよあたり」
テンション高めの斎宮さんがそんなことを言ってました。にしても、めっちゃ写真撮るな。でした。
さらにその後、斎宮さんは俺にスマホを渡してきて「かっこよく撮って」みたいなことを言いましてね。なんていう撮影なのかは俺にはわからなかったのだが……シルエット?みたいな感じの斎宮さんを撮影することになりました。
何度かやり直し――というのと、太陽は止まってくれないのでね。ちょっとバタバタと撮影を行い。何とか斎宮さんが納得する写真を撮りましたとさ。
うん。太陽に向かって立っている斎宮さん。かっこいい感じでした。はい。
とまあ、みたいなことをしてましてね。
そうそう、やっとというべきなのか。この時に俺は撮った写真を見つつ「ホントキレイな夕日。夕焼けか――って。あれ……?」と、とあることに気が付きました。いや思い出しそうになったと言うべきか。
「……あれ?なんか斎宮さんと普通に常滑の観光してるけど――なんか忘れているような……」
俺がそんなことを呟くと、ちょうどそのタイミングで――。
♪♪
俺のスマホの画面にメッセージの通知が――って。はい。その時思い出しました。完全に思い出しました。頭の隅にもいなくなりかけていた記憶が勢いよく戻ってきましたよ。
「あっ、とこにゃんところに着いた時に、海織からメッセージ来てたの忘れてた……って――そうだ!」
完全に時間を忘れていたというか。集合時間というのを忘れていました。はい。忘れてた!ですよ。やっと思いだした俺だった。
さらに俺がいろいろ思い出したタイミングとほぼ同時に、俺の横では斎宮さんも「あっ」という声を出していまして――。
「そういえばお茶してる時に、私のところにも海織ちゃんからメッセージ来たけど――ちょうどこの場所の事調べている時だったから……後で見ようとしてて確認する忘れてたー。って……楓くん楓くん」
「——うん?」
そんなことを呟いていた。うん。斎宮さんも気が付いた。思い出した感じですね。と俺は思いつつ斎宮さんの方を見ると――。
「私たち。3人と待ち合わせしてなかった?してたよね?名古屋で解散。各グループ自由行動!じゃなかったよね?」
「ですね。解散ではなかったですね。再合流と言ってましたね」
「今私たち、綺麗な夕日見てるよね?夕日ってことは――結構な時間だよね?」
「綺麗な夕日、夕焼けを見てますねー。うん。普通に散策を楽しんでいて、時間忘れていたというか。メッセージの存在も忘れて――ってそもそも再合流ってことがすっかり頭から抜けてましたね」
「あっ、楓くん楓くん――海織ちゃんから3件メッセージ来てるんだけど、見るの怖いから代わりに見て」
「自分で見ましょうよ。ちなみに俺は――海織2件。七菜3件なんだが――」
俺が自分のスマホを見つつつぶやく。ちなみに今さっき俺のスマホを鳴らしたのは海織なのだが。間に七菜が3回鳴らしていたみたいだった。
とりあえずごめんなさい。だった。まあ向こうには聞こえてないけどね。うん。ってか。なんかメッセージ見るのが怖いなー。である。
太陽は止まることなくゆっくり沈んでいるって中。各自スマホとにらめっことなった2人だった。
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