第522話 休日の後輩14

現在の時刻は――20時57分だ。


「57分ってことは――」


俺がそうつぶやいていると、電車の発車する音が聞こえてきたのだった。つまりそれは――今俺が見つけた電車の発車を意味するものなので――。


「……58分になったか。ってことは名古屋行きの普通は発車したと――」


俺が時刻表を見つつそんなことをつぶやいていると。隣から。


「じゃあ次は13分の急行が一番早く四日市行くんじゃない?」

「えっと――一緒に乗ろうとしているみたいですが。本日の海織はどちらに向かってますか?」

「えっ?そりゃもちろんだよ」


はい。なんかニコニコしている方がお隣に居ますので――俺はそれ以上聞かずに。


「……はい。わかりました」

「うんうん」


今日も海織はこっちに来るみたいですね。急行のすぐ後。20時15分に近鉄四日市行きの普通電車があるんだけどな……と俺が思いつつ時刻表を見ていると――さらに違う声が聞こえてきた。


「海織ちゃん私も今日行っていい?」

「いいよー」

「—―—―うん!?」


斎宮さんと海織が急に何か言いだしたが――何かおかしくないか?と俺が思っていると。


「ってことで楓君。今日沙夜ちゃんも行くから」

「……俺の部屋ですよね?なんか勝手に決まってませんか?」

「大丈夫大丈夫」

「いやどこが?」

「いやー、だって楓くん今日買った服の試着しないとじゃん。それにこんな遅い時間に私を1人で帰らすの?3人は川島で降りるよね?」

「……遅い時間――うん。柊を呼びだすは?」

「選択肢になし!面白くなさそうだし」

「面白いだけで選んだか――」

「楓君ところならくつろげるからね」


斎宮さんがそんなことを言ってきたが――うん。どういうこと?と俺が思っていると。


「加茂先輩」

「うん?七菜もどうしたの?」


七菜まで話しかけてきた。そして――。


「—―なんか私嫌な予感がするんですが」

「……」


いきなりそんな不吉なことを言ったのだった。いやいや……多分大丈夫――と俺は思いつつも。でもまあなんかちょっと2人が揃うのでね。嫌な予感はしているけどさ。と、俺が思っていると。


「とりあえずここに居てもだからホーム行こうか。まだ時間はあるけどね」


海織がそんなことを言い。改札を斎宮さんとともに抜けていったので――とりあえず俺と七菜も――嫌な感じが少ししつつも2人に付いて行ったのだった。


それからホームへと向かった後は、海織、斎宮さんが何やら楽しそうに話していまして――俺と七菜は――うん。さらに嫌な予感。と小声で話していましたとさ。


そんなこんなで20時13分。


定刻通り名古屋行きの急行が白子駅へとやって来て、俺達4人は電車に乗り込んだのだった。車内はクロスシートの座席で2人分空いていたのだが――ここで不思議なことが起こっていた。クロスシートは基本—―2人用だと俺は思っていたのだが。


「—―なんか狭くないですか?」


現在七菜からそんな声が聞こえてきた。

現状を言うと――海織、斎宮さんの間に七菜がハマっています。はい。

俺はその座席の後ろ。ドア付近に立っているのですが――うん。何でそうなったかと聞かれると――まあ自然となりなしたね。

まず斎宮さんが座って――七菜は席を海織に譲ろうとしたみたいだったが――そのまま2人に引き込まれていき。綺麗に3人ハマりました。ってか――ここの3人スリムですから……うん。2人用と思われるクロスシートに座れるというね。特に七菜は小さい……おっと危ない。これを言うと――なのでえっとなんて言おうかな?えっと――やっぱりスリム?うん。小柄?うん。どの言葉が安全かな……えっと――まあスタイルが皆さん良いから、3人でもなんか座れちゃった。と言う事です。はい。ちょっと狭そうですが……まあ大丈夫みたいです。


「あの――私立ってますけど……すぐですよね?」


七菜はというと避難しようとしているみたいだったが――まあこの2人がそんなことを許すわけなく。


「まあまあ七菜ちゃんもゆっくりしてよ」

「いやー、これゆっくりというか。狭くないですか?」

「あっ。じゃあ七菜ちゃん私の膝の上乗る?」

「子ども扱いされていた!?」

「七菜ちゃん私の上でもいいよ?」

「斎宮先輩にも子ども扱いされていた!?」


俺の後ろ――うん。賑やかですね。見ていないので何が起こっているかわかりませんが――真後ろなので声はちゃんと聞こえます。というか――うん。人は少なめだが騒がないようにね?と思っている俺だった。

えっ?なんで見ないかって?そりゃ――見ていたら何を言われるか――ですからね。ちょっとでも見ていたら。海織とかすぐに気が付いて反応してきそうですからね。

だから関係ありません。まあちょっといろいろ袋。荷物をたくさん持っていますが――後ろの方々とは関係ありません。というオーラを出しつつ俺は真っ暗な外の車窓を見ていたのだった。


ってか改めてホント3人の荷物多いな。と思いつつ俺はふと両手を見たのだった、左手はなかなかの買い物袋だよだった。

ってちなみにだが。俺の後ろで3人が普通にクロスシートに3人で座れているのは、海織のカバンは俺の右手に、斎宮さんのカバンも俺の右手に――ということが起きているからだと思う。ちゃんと自分のカバンを持っているのは七菜だけというね。

はい。荷物持ち担当からのお話でした。さあ、真っ暗な車窓をもうすこし見ていましょうか。

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